第4話 新たな挑戦

ひなたはサークルでの活動に慣れてきたが、彼の中にはまだ乗り越えなければならない壁があった。それは、自分の声を他人に聴かせることに対する恐れだった。


ある日、カラオケサークルのメンバーたちは、遠征で少し離れた街のカラオケ店に行くことになった。あすかが新しく見つけた「カラオケ・ファンタジア」という店だった。ひなたは不安そうな表情を浮かべていたが、仲間たちの励ましでなんとか参加することにした。


「大丈夫だよ、ひなたくん。今日は楽しく歌おう!」あすかは明るい声でひなたを励ました。


「うん…そうだね。」ひなたは小さく頷いた。


店に到着すると、広々とした個室に案内された。最新のカラオケ機器が揃っており、たろうは興奮していた。


「すごい、これ、最新の機種だよ!」たろうが機器を操作しながら言った。


「すごいね、たろうくん。」ひなたは感心しながらも、その新しい環境に緊張していた。


メンバーたちは順番に歌い始めた。あすかはポップスを、さくらはバラードを、たろうは元気なロックを歌った。ひなたの順番が来たとき、彼はマイクを握りしめていたが、その手は微かに震えていた。


「ひなたくん、大丈夫だよ。私たちがいるから。」あすかが優しく声をかけた。


ひなたは深呼吸をして、マイクを握りしめた。そして、彼が得意なバラードを選曲した。緊張しながらも、彼は歌い始めた。最初は声が震えていたが、次第に落ち着き、彼の心の中から溢れ出る感情が歌声に乗って響いた。


その歌声に、メンバーたちは静かに耳を傾けた。歌い終わったとき、ひなたは顔を上げ、みんなの反応をうかがった。


「すごく良かったよ、ひなたくん!」あすかが拍手をした。


「そうだね、素晴らしい歌声だったよ。」さくらも微笑んでいた。


ひなたはその言葉に安心し、少しずつ笑顔を取り戻した。その瞬間、彼は自分の中の恐れが少しずつ消えていくのを感じた。


「ありがとう、みんな。」ひなたは心から感謝し、その日のカラオケを楽しむことができた。


その帰り道、ひなたは満たされた気持ちで街の風景を見つめた。潮風が心地よく吹き、彼の心に新たな挑戦への勇気を運んできたようだった。

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