第3話 サークルの新しい風

数日が過ぎ、ひなたはカラオケサークルでの活動に徐々に慣れてきた。

サークルでは、メンバーたちがそれぞれのお気に入りの歌を披露したり、新しいカラオケ店の情報を共有したりと、自由な雰囲気で活動していた。


その日、ひなたは放課後、あすかとたろうと一緒にサークルルームへ向かっていた。桜の木々が学校の周囲を彩り、春の穏やかな風が吹き抜けていた。


「今日はどんな曲を歌おうかな?」ひなたはつぶやいた。


「新しい曲もいいけど、たまには懐かしい曲もいいかもね。」あすかが答えた。「今日は8トラのカラオケ機械も使えるみたいだし。」


「そうだね。懐かしい感じがいいね。」ひなたは微笑んだ。


サークルルームに入ると、さくらが待っていた。


「みんな、お疲れ様。」さくらは優しく挨拶した。「今日は、何を歌う?」


「8トラのカラオケ機械で昔の曲を歌おうって話してたんだ。」たろうが答えた。


「いいわね。」さくらはにっこりと笑った。


ひなたは、そんな温かい雰囲気に包まれていると、ふと、自分の過去の記憶がよみがえってきた。以前の学校では、彼の特異な才能や趣味が原因で、疎まれたり、いじめられたりしていた。だが、今は違う。彼は、このサークルで自分を受け入れてくれる仲間に出会えたのだ。


「ひなたくん、何か歌いたい曲ある?」あすかが尋ねた。


「うん…、昔よく聴いてた曲があるんだ。」ひなたは少し緊張しながらも、マイクを握りしめた。


懐かしいメロディが流れ始めると、ひなたは自然と微笑みながら歌い始めた。その歌は、彼の心にあった重みを少しずつ取り除いていくようだった。


その後、みんなで順番に懐かしい曲を歌い、笑い合い、楽しい時間を過ごした。カラオケサークルは、彼にとって新しい家族のような存在になりつつあった。


その帰り道、ひなたはふと空を見上げた。夕暮れの空に浮かぶ薄い月が、彼にとっての新しい始まりを告げているように見えた。


「ありがとう、みんな。」ひなたは心の中でつぶやき、温かな気持ちに包まれながら帰路についた。

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