第3話 八瀬という男
泰斗はもう無いな。ブロックしよう。
学校に登校して八瀬を見たが本に熱中しているようだ。そうすることしか出来ないかもしれないが関知することでもないだろう。
「アリス、心配したよ。カラオケ来ないんだもん、八瀬に襲われたと思ったよ」
女の子たちは八瀬に目をやった。ありのまま言えばまだ襲われた方がマシだった。金的狙って蹴り上げたらいいだけだからだ。
「昨日の夜ね。田中くんからラインで告られてさ、好きだって言われた。もうどうしよう」
「詳しく教えてよ」
まとめ役がのろけ始めたので、私は女の子になって教えて欲しそうに話を振るけど、その田中くんがどこに所属しているのか。
どんな男の子なのか私は知らないし、興味はない。
それよりも偶然当たった予言はどこからの情報は八瀬に聞かないといけない。
田中くんは野球部のキャプテンでピッチャーらしい。
必要な情報はそれだけなのに、どんなところがかっこいいかとか、電話で告るのってどう思うとか、寝落ちに付き合ってくれないかもという話を女の子として首を縦に振り、うらやましそうに女の子した。
女の子給料もらっていいくらい。
「アリスはそういうの無いの?」
「そういうのって?」
「田中くんに聞いていい感じの男の子紹介してもらおうか?」
今で十分満足している。
「私、そういうのよく分からないから」
「えー、うそー。なんか慣れてそうだけど」
みんな女の子だな。慣れていることは見抜いてきたか。
「本当だよ」
どうせ最終的にはエッチするし、運動部ならそのへん飛ばすかな。
私は女の子で、お姉ちゃんで、男に貸している。守りたい守るべき弟の部屋の真上で色んな男に貸している。
八瀬が教室から出て行った。
「私、トイレに行ってくるね」
まとめ役は私も行こうかなと言い出した。
「その大きい方だから」と、声を潜めると。
「最近、重いから長くなるかも。もうべっとりよ。みんな私の見る?」
嫌だよ。見たくない。女の子たちはみんな嫌そうな顔をする。みんなにやってきて、経験するもので、わずらわしい生理。
生理だから今日は無理と言ったのに「生で出来るじゃん」と、言ってラインをしてきたクソ野郎がいた。すぐにブロックしてやった。
愛想笑いをして、私は廊下へ出た。男子トイレをのぞいてみたが、あまりジロジロ見るものではない。休み時間も永遠ではない。食堂は人が多すぎるし、屋上は開放日ではない。雨がしとしと降っている。
私は女の子をしなくていい今、安心感を覚える。一人になると私は自分でいることが出来ている気持ちになるのだ。
ストレスの解消方法が無いことが一つ大きな要因だろう。貸してアマギフもらっても嬉しくないし、女の子をしていても楽しくない。
普段使っていない第二音楽室まで来た。ここならクラスメイトは来ない。
「教室から出てこられたんだね」
「私、今トイレで頑張っていることになっているの」
「高校生って面倒くさいね」
「痩せすぎの八瀬」
「本当の事だから」
「それでどこからの情報?」
「今晩、お父さんは弟にナイフを向けて、いつまでも甘えるなって脅すよ」
「なんで脅すの?」
「今はそこまでは言えない」
「変なの」
「実際そうなるよ。早々に信頼して欲しいところだけど」
「ありそうな話よね。ちゃんと避妊してね。やっぱり童貞を卒業したいってわけ」
「気まずい」
「友達がいるなら紹介してよ」
「僕には最初からいないよ。多分、これからもずっと」
「携帯」
「え?」
「ライン交換しようよ。アンタの予言に付き合ってあげる」
「携帯は持っていない。メールだったらパソコンで」
驚いた。今の時代に携帯を持っていないなんて。
「アンタ、それマジ?」
「うん、ごめん」
「アドレス教えて」
「覚えていないから、ここを集合場所にしよう」
「呆れた。私は何回トイレで頑張らないといけないのよ」
「僕は高校生になるのが初めてだから塩梅が分からないや」
「もう二年でしょ?」
八瀬って変なやつ。
「明日もここで待っているから」
「屋上にしてくんない? 人の気がないこんなところより、気分転換が出来る屋上の方がいい」
「あと一週間は雨だよ」
「天気予報は外れるわよ」
教室に戻ると遅かったねと言われたので、便秘が解消されたと小さな声で女の子をした。
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