第14話 ヘリオス再起動
「シャルパン、街の魔物を駆除してきてくれ。こいつは俺らで倒す」
「了解! ご武運を。ユークどの」
シャルパンはドラゴン形態のまま飛び立っていった。
「まずは跪くところからじゃないか? 【聖域】のヒナビ?」
「誰が悪魔ごときに……っ!」
刹那、細い光線が天から降り注ぎ、ヒナビの右足を斜めに貫いた。ヒナビは膝をついてしまう。鮮血が床に丸く広がる。
「なにをした?」
ヒナビは戸惑うが、これは間違いない。シャルパンの言っていたヘリオスによる攻撃だ。
「ヒナビ! 上空からの攻撃だ! 遮蔽物に隠れても意味はない。こいつを倒すしかない!」
俺はそう警告する。おかしい。ヘリオスなら千年前にルーライ様が無効化したはず。なぜベリアルが使える?
「いい機会だ。教えてやろう。聖典で語られる太陽神ヘリオスこと、衛星兵器ヘリオス。その自動運転を停止させたのがルーライだ。だが、ヘリオスを手動で起動する方法は、歴代の大聖女に口伝で継承されている。俺がウルスラに憑依したのは、その方法を知るためだ」
ウルスラ様はすべて知っていたのか。そして、ヘリオスまでをも味方に付けたベリアルは、もはや無敵。どうやって倒す?
「エリアスキル【禁裏御料】」
傷を負いながらも、ヒナビは結界術を発動させる。そうか。この結界でヘリオスの光線を防ごうというわけか。
「どこまで持つかな?」
四方八方から無数の光線が飛来し、結界の境界を穿とうとする。
「ヒナビ、結界の維持に集中しろ。俺が奴の相手をする」
「そう……申し訳ない、頼むわ」
「その身体で何ができる? ユーク・イーゼルベルク?」
ベリアルはニタニタと笑いながら煽ってくるが、関係ない。実力が足りていようがいまいが、こいつを倒せればなんでもいい。
「刺し違えてでも殺す。ベリアル」
「できるのか? そんなことが? 見たところアルクスの魂はまだ生きている。人様の身体で相討ちに持ち込むなど、貴様の良心が許さないのではないか?」
確かにそうだ。この身体はアルクスのもの。いずれは返さなくてはならない。ベリアルもろとも自爆するような真似もできない。どうにかして無力化せねば。
「【主の威光の前では、夜も暗くない。光も闇も同じである】」
そう唱えると、俺は即座に突進し、横薙ぎの一閃を叩き込んだ。続けてかなりの速さで連撃を打ち込むが、すべて受け切られる。ライアンの身体を使いこなしているな。
だからこそ、仕込んでおいた聖魔法が効いてくる。
「聖魔法【セイント・スフィア】!」
俺は時間差で、球体状の魔力塊をぶつける。奴は剣を捌ききるので手一杯な以上、有効な攻撃になるはずだ。
「ぐっ、」
ベリアルに魔法が直撃する。だが、手応えはない。ライアンの纏う高密度の魔力が、俺の魔法を弾いていた。
「無駄なんだよ」
ライアンの斬り下ろしを受け切れず、俺は後退する。
千年王朝の反逆者~国賊として死んだ最強騎士は、最弱冒険者から復讐を目指す~ 川崎俊介 @viceminister
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