第13話 聖都陥落

「確かに、打って出るときなのかもな」


「そうよ、いつまで鍛練を続ける気なの?」


 さすがに覚悟を決めるときが来たか。


「行こう、ヒナビ。聖都に行って、ウルスラ様をお救いする!」


 俺はそう決意した。


「ヒナビ様!」


 そんなところで、ヒナビの従者らしき男が駆け込んできた。


「どうした?」


「聖都シグニフィカティウム、魔物の軍勢により陥落したとのこと!」


 慌てた様子で男は告げた。


「な、」


「そんなことが……」


 俺たちは呆気に取られてしまう。シグニフィカティウムには数多の手練れの聖騎士がいる。ライアンだっている。それでいて陥落など、あり得るはずがない。


「聖騎士たちは何をしている?」


「それが、乱心したライアンどのに、軒並み斬り殺されたとのこと」


 ライアンにまで悪魔が乗り移ったか。それでは確かに、並みの聖騎士では太刀打ちできない。まして上官たる四聖憲の裏切りとあれば、不意を突かれるだろう。


 これは、いよいよ俺たちが出張るときだ。


「行くぞ、シャルパン、ヒナビ」


 俺は静かに呼びかけた。

                  ◇

 シャルパンに乗り上空から大聖堂を目指したが、既に有翼の魔物が数多く滞空していた。お陰でシャルパンのファイアブレスを二度も放つ羽目になったが、魔力消費はゼロなので良しとしよう。


「あぁ言っといてなんだけど、あんたはそのアルクスとやらの身体では満足に動けない。私が先陣を切るから、隙を見て攻撃して」


「了解した」


 実際、それが妥当だろう。それよりも、今度は俺がライアンを殺さねばならないかもしれない。それだけの覚悟を決めなければ。


 天蓋を破って着地すると、聖騎士の死骸が散乱していた。


「来たか。死にぞこないが」


 ライアンに憑依したベリアルが挑発してくる。


「肉体は死んでるけどな」


 俺がそんな無駄口を叩いているうちに、ヒナビはライアンに斬りかかっていた。神速の一閃だったが、当然のごとく防がれる。さすがは【鉄壁】のライアンの身体を使っているだけのことはある。


 ライアンは防御力に特化した聖騎士。攻撃への咄嗟の反応も速いし、なにより高密度の魔力を常時全身に纏っているため、攻撃が当たったとしても通らない。


 悪魔が憑依するにはうってつけの人物というわけだ。

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