酉の章3 最強魔法少女タトーと酉の朱雀
朱雀の山の頂。
ガタガタと音をたてながら黒い戦車がやって来る。
ナナレイだ。
「ドォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォン! 到着ぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ! 」
ナナレイの頭の扉からキュインと開く音がした。
そこから、猫耳パーカーの魔法少女が現れる。
タトーだ。
「どれどれ」
タトーは、ナナレイの頭から顔を出して山頂の様子を見る。
そこには、平らに見える地面と大きな湖があった。
「どうりで、戦車で行けると思ったあぁ」
タトーは、朱雀に相応しいすごい山を想像していた。
しかし、戦車で登れるくらい低い山となると、期待した方が悪く思うのである。
「はぁ…………きっと、酉の朱雀はナナレイより弱いんだろうなぁ」
タトーが無限軌道に乗ってつぶやいたこの時。
「我を侮辱したのは、お主かっ! 」
「ううん? 」
湖の上を、赤い翼の少女がバサバサ飛んでやって来た。
「よっこらせっっと! 」
赤い翼の少女は、芝生の上にゆっくり降りた。
その後、赤いチャイナ服を払う。
そして、縛った二本の赤い前髪を撫でた。
「ねぇ、それいつもの習慣? 」
「うや、我の直せない癖じゃ。話す前についやってしまうのでの。とにかく、侮辱したお主らから名を申してくれ! 」
「あたしは、魔法少女のタトー」
「あたしは、魔法少女のナナレイ」
「我は、酉の朱雀。朱雀の山の番人じゃ。まさか、しゃべる戦車がいるとは珍しいのう」
「あたしは、変身魔法でこの姿になっただけ。本物の戦車じゃないよ」
「なるほどな。なんか、話していたら、侮辱とかどうでもよくなったわい。しかし、試練はこれからじゃ。今から、お主らに、酉の試練を受けてもらおう」
朱雀が背中から弓と矢を一本ずつ取り出した。
「モード『ヘルハウンド』」
タトーは、パーカーのデザインを黒い犬に変えて準備をする。
「ルールを話そう。我を殺さずに十二器の一つ朱雀の弓を奪えば試練クリアだ。いいな! 」
「はい! 」
「では、手合わせ願おう! 」
酉の試練が始まった。
最初に動いたのは、ナナレイ。
彼女は、無限軌道をガタガタと回してたてに回る。
「どりゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁうわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ……」
ナナレイは、止まることなくドボンッという水柱との音とともに湖の中へと消えて行った。
「あーあ! 」
「すきあり!
「ううん? 」
タトーは、二十発の炎の矢を撃たれた。
しかし、炎の矢はタトーの体を貫通。
傷も火傷も無い状態で回避した。
「な、なぬ? 」
「こっちが言いたいよ! 」
「タトーよ。その魔法はなんじゃ? 」
「うーん?
「今、考えただろ! 」
「だって、戌のブラックドッグのソツは、この魔法を使わなかったもん! 」
「戌のブラックドッグは使わなかったのか? なら、仕方ない…………」
「ううん? 」
酉の朱雀は、弓を両手で持ってタトーに渡した。
「タトーよ。この弓はお主に渡そう。もう、これ以上、出せる攻撃など無い。試練は、合格だ」
「あ、ありがとう。朱雀さん! 」
タトーは、服を脱いで全裸になった。
そして、朱雀の弓を抱きしめる。
すると、朱雀の弓はタトーの胸の中に吸収されて姿を消した。
「酉の試練終了っと! 」
すると、ザバザバと言う音が湖から聞こえた。
「ううん? 」
「う゛ふぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ! 」
現れたのは、黒いハイレグ水着のナナレイ。
「ううん? タトーさん? え!? 何で全裸になっているんですか? 」
「こっちこそ聞きたいよ! 何で水着なの!? 」
「それを聞きたいなら、その穢らわしい痴態を隠しなさい! 」
「そっちこそ、濡れ衣のような水着を隠して! 」
「まあまあまあ! 」
タトーとナナレイの口喧嘩を見た朱雀は、なだめるように仲裁する。
そしてこの後、タトーとナナレイはいつもの服に着替えて下山した。
十二器制覇まで、後九器。
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