酉の章1 最強魔法少女の移動和風カフェ

 四月二十六日。

 タトーは、亜空間屋敷を使って和風カフェを開いた。

 旅に使うお金を増やすためである。

 お店の名前は、『三毛猫ノ御屋敷』。

 囲炉裏がある一組限定のカフェだ。

 囲炉裏の炎は『早く来い』とパチパチと音を鳴らしながらお客さんを待っている。

「コーヒーのも料理も準備OK! 」

 三毛猫ノ御屋敷のメニューは、日替わりセットのみ。

 午前中は、コーヒーと焼き魚とパンとサラダとスイーツ。

 午後は、コーヒーとスイーツのセットである。

 今は午前中のため、コーヒーと焼き魚とパンとスイーツのセットだ。

「早く来ないかなぁ…………」

 タトーが木の枝をパンの生地で巻いていると、黒い扉がガタッと開いた。

「ごめんくださーい! 」

「いらっしゃいませぇ…………ええ!? 」

 現れたのは、新人冒険者の弓矢使いと、死んだはずの剣士と斧使い。

「久しぶりねぇ。けれど、何で剣士と斧使いまでいるの? 」

「逃げた翌日に、もう一度滝壺の近くに行ったら、剣士と斧使いが赤い羽根に付いた状態で生き返ってたんだ」

「やはり、朱雀の魔法かぁ。とにかく、お昼にしましょう」

 タトーは、囲炉裏とパン生地と鮎を刺した後、弓矢使い達三人に菜の花のサラダを配った。

「いただきます!!! 」

 弓矢使い達は、木の箸で菜の花とレタスを摘まむ。

「むぐむぐむぐむぐむぐむぐむぐむぐむぐむぐむぐむぐむぐむぐむぐ……ゴクン…………」

「にっがぁっ! これが菜の花かよ! 」

「斧使いには、菜の花は早いようだなぁ」

「オレ達は平気だぞ」

「そんなんだったら、根性を出して食ってやるよ。むぐむぐむぐむぐむぐむぐむぐむぐむぐ…………にっがぁっ! 」

 斧使いは、苦戦しながらゆっくりと菜の花のサラダを完食した。

 弓矢使いや斧使いも菜の花のサラダを完食。

 すると、鮎から白い油がポタポタと垂れてきた。

「次は、焼き魚をどうぞ! 」

「いただきます!!! 」

 タトーは、弓矢使い達に一本ずつ焼き魚を配った。

「むぐむぐむぐむぐむぐふほっふほっふほっふほっむぐむぐむぐむぐむぐむぐふほっふほっふほっふほっふほっむぐむぐむぐむぐむぐむぐむぐむぐむぐむぐ…………ゴクン…………」

 弓矢使い達は、焼きたてと魚の身に苦戦しながら何とか鮎を完食した。

 すると、パンがこれ以上膨らまないくらい大きくなった。

 そのパンの焼き目からは『食べて食べて』と美味しい匂い放っている。

「次は、パンをどうぞ! 」

「いただきます!!! 」

 タトーは、弓矢使い達に一本ずつパンを配った。

 そして、弓矢使い達は焼きたてのパンを親指と人差し指で摘まむ。

「あち! 」

「あちちちちち! 」

「あぢいっ! 」

「焼きたては、熱いよ。三人共! 」

「いやぁ、すまねぇ…………」

 弓矢使い達は少し冷めてから、パンを千切った。

「むぐむぐむぐむぐむぐ…………むぐむぐむぐむぐむぐ…………むぐむぐむぐむぐむぐ………むぐむぐむぐむぐむぐ…………むぐむぐむぐむぐむぐ…………むぐむぐむぐむぐむぐ…………むぐむぐむぐむぐむぐ…………ゴクン………」

「おお! ほどよい焦げ目が、いい味を出しているなぁ」

「ジャムもマーガリンもいらないな! 」

「ああ! 」

 弓矢使い達三人は、木の枝に付いたパンを完食した。

 最後は、スイーツだ。

 タトーは、囲炉裏の真ん中に吊されている鉄の鍋を開けた。

「ううん??? 」

 そこには、金属のカップに入ったカップケーキ。

 チョコチップ、イチゴ、ゴルンゴンゾーラ、の三種類がある。

「美味しそうだ。オレは、チョコチップ! 」

「オレは、ゴルンゴンゾーラは苦手だから、イチゴ! 」

「じゃあ、オレは、余ったやつ! 」

 三人はそれぞれカップケーキを取り出した。

 斧使いは、チョコチップ。

 剣士は、イチゴ。

 弓矢使いは、ゴルンゴンゾーラだ。

「いただきます!!! 」

 最初に食べたのは、斧使い。

「ふっほふっほふっほふっほ……むぐむぐむぐむぐむぐむぐむぐむぐむぐむぐむぐ…………ううん? 」

 斧使いは、半分になったカップケーキを中身を見た。

 何と、たっぷりのチョコソースが入っていたのだ。

「こりゃあ、いっぱい喰わされたは、すっげぇぇぇぇぇぇぇぇぇ濃厚なチョコだなぁ! 」

 斧使いはチョコチップのカップケーキを完食した。

 次は、剣士。

「ふっほふっほふっほ……むぐむぐむぐむぐむぐむぐむぐむぐむぐむぐむぐむぐむぐ…………ううん? 」

 剣士も、半分になったカップケーキの中身を見た。

 やはり、剣士が食べたカップケーキにもソースが入っていた。

 イチゴのソースだ。

「甘酸っぱさが止まんないなぁ! 」

 剣士は、イチゴのカップケーキを完食した。

 最後は、弓矢使い。

「ふっほふっほ……むぐむぐむぐむぐむぐむぐむぐむぐむぐむぐむぐむぐむぐむぐ…………ううん? 」

 弓矢使いも、半分になったカップケーキの中身を見た。

 弓矢使い使いが食べたカップケーキにも何が入っている。

 しかし、それはソースでは無い。

「オレ大好きな、クリームチーズだ! 」

「ふふん♡」

「この甘塩っぱさはすごい! また食べてみたいくらいだよ! 」

 弓矢使いは、寂しさを感じながらもゴルンゴンゾーラのカップケーキを完食した。


 弓矢使い達の昼食が終わった。

 日替わりセットの値段は、一人金貨二枚。

「すっごく、美味しかったよ。これは、魔法少女さんへのサービスだ」

「ええ!? 」

 しかし、弓矢使い達は金貨三十枚をタトーに渡した。

「ちょっと、払いすぎよ! 」

 タトーは、黒い扉を見た。

 ガタッとと言う音とともに、弓矢使い達は三毛猫ノ御屋敷を後にした。

「ふうん…………」

 タトーは仕方なく、三十枚の金貨を袋の中に入れる。

 そして、次にお客さんが来るのを待つことにした。


 


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