戌の章2 最強魔法少女タトーと本当の強さ

 四月二十三日の朝。

 タトーは、カフウ城の地下一階の牢獄にいた。

 彼女に下された懲役は一年。

 モンスターを十年も殺してきたタトーには、短すぎる刑である。

 しかし、カフウ国での判決。

 ヒュウラン国の法律でないのだ。

「はぁぁぁぁぁ…………お腹空いたなぁ…………」

 タトーは、全裸で手足を鎖で縛られている。

 彼女は投獄されてから二日間、ずーっと何も食べていない。

『短い刑期でも、厳しくしたい』と言う、ソツの意向である。

 すると、ギギギッと木の扉が開く音がした。

「ううん? 」

 扉の奥からゴスロリのケットシーと白い二尾のブラックドッグが、石畳の上を歩いて来る。

「待たせたな。魔法少女! 」

「ぶにゃぁっ! 」

「ソツ! それに、ヘキ! 」

「覚えついたか。さすが、最強魔法少女」

「うにゃっ! 」

「ソツ。どうして、ヘキは生きていたの? 」

「酉の朱雀の羽根だよ。この国には、朱雀の山がある。そこに住む朱雀が、カフウ城をよく通るんだ! 」

「朱雀様には、感謝してるにゃっ! 」

「話は、それだけ? 何かようがあるんでしょう? 」

「ああ、ようもなく来たわけではない。ヘキ。例の物を出してくれ」

「はいにゃっ! 」

 ヘキが、背中のリュックサックを下に置いた。

 そして、固く結ばれた黒い紐をきゅっと解く。

 すると、中から服のような物がどんどんと出てくる。

 振り袖付き三毛猫のパーカー、黒い軍服、Yシャツ、焦げ茶色のブーツ。

 そう、タトーの服である。

「どうして、あたし服を? まさか、魔法で燃やすつもり? 」

「そんなことはしない。それをやるのはないもっと悪いブラックドッグがすることだ」

「ソツさんは、いい人か悪い人かわからないですにゃん」

「ヘキ。一言多いぞはいですにゃん! 」

 ヘキは、牢獄の鍵と鎖の鍵を外してタトーを開放。

 そして、タトーに服を着せた。

「ヘキ。どうして、開放するの? 刑期まだ終わってないわよ」

「本当に開放するかは、この後の戌の試練しだいだにゃん! 」

「ええ!? 戌の試練? 」

「魔法少女よ。あんたには、もう一度戌の試練に挑んでもらう。あんたは、モンスターを殺せるくらい、強い魔法少女とみた。しかし、弱者に優しくしてこそ本当の強者である」

「弱者に優しくしてこそ…………うん……リベンジさせてもらうわ! 」

「ああ、オレについてこい! 」

「ふあぁぁぁぁぁぁん…………」

「ヘキもだ! 」

「あ、あああああああああああああああああああああああああああああ、はいにゃっ! 」

 タトーとソツとヘキは、木の扉をギギギッと閉めた。

 そして、再びカフウ城の一階へ移動する。






 

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