戌の章1 最強魔法少女タトーと戌のブラックドッグ

 四月二十一日。

 川を下ったタトーは、カフウ国にやって来た。

 カフウ国は、飲食店がカフェだけの国。

 ケットシーやハーピーやミノタウロスなど、カフェ相応しいモンスターがたくさん暮らしている。


 タトーは、カフウ城の城下町にある和風建築のカフェにいた。

「むぐむぐむぐむぐむぐむぐむぐむぐむぐむぐむぐむぐむぐむぐむぐむぐむぐむぐむぐ……ふぅぅぅぅぅぅ……大蒜とバターと牛肉の味がブラックコーヒーに合うわぁ」

 木造の部屋のカウンター席で、タトーは美味しそうにお昼を食べている。

 カフェの名前は『天丑あめうし』。

 和風カフェなのに、ガーリックバターのステーキが売っている店だ。

 違和感あるようなメニューだが、タトーは気にせずステーキをペロリとたいらげた。

「ごちそうさま! 」

 すると、入り口の方からガランガランと吊された木の棒が揺れた。

 そこには、黒いケットシーとブラックドッグのモンスターがいる。

 手前にいるケットシーは、黒いポニーテールと爆乳とゴスロリと細い尻尾。

 奥のブラックドッグは、黒いポニーテールと爆乳と白いパーカーと黒いサロペットと二本のモフモフ尻尾をしている。

「いらっしゃいませ! 戌のブラックドッグのソツさんとケットシーのヘキさん」

「ブラックコーヒーを二つ頼む」

「かしこまりました! 」

 どうやら、ケットシーは『へキ』でブラックドッグは『ソツ』と言う名前のようだ。

 二人は、タトーのとなり間隔を詰めて座った。

 しかし、店員である青い和服のハーピーは、ブラックドッグのソツのことを『戌のブラックドッグ』と読んでいた。

 タトーは、試練に挑めるチャンスである。

 彼女は、ソツとヘキがコーヒーを飲み終えるのを待った。

「うーん…………」

「ゴグゴクゴグゴクゴグゴクゴグゴクゴグゴクゴグゴクゴグゴクゴグゴクゴグゴク……」

「プヒャァァァァァァァ…………このコーヒー美味しいですにゃん! 」

「ありがとうございます、へキさん! 」

「あのう、あなたは戌のブラックドッグだよねぇ? 」

「わ、わたしは違うにゃ! 」

「魔法少女さん。わたしのことではないのかね? 」

「そうよ、ブラックドッグのお姉さん。あなたの戌の試練に挑ませてくれるかしら? 」

「いいだろう。ただし、カフウ城に行ってからだ」

 タトーとソツとヘキは、金貨を払った後カフウ城へ移動した。


 カフウ城の一階。

 黒い石に囲まれた部屋の中で、タトーとソツとヘキが集まった。

 戌の試練のルールは、二つ。

 一つは、ケットシーのヘキを殺さないこと。

 もう一つは、十二器の一つ『焔獄えんごく双犬そうけん』と言う銃を奪うことだ。

「準備は、出来たか? 」

 ソツは、二丁の両手の人差し指でクルクルと回している。

「準備は、出来てるわ! 」

「では、はじめ! 」

「ブニャッ! 」

 戌の試練が始まった。

 開始とともに、二丁の銃で二発発射。

 ヘキは、ビックリして頭の猫耳を両手で塞ぐ。

「ふふん♡」

「ううん? 」

 銃弾は、タトーの頭に命中。

 しかし、彼女は無傷だった。

「おかしいなぁ? 『うつ魔弾タマ』と言う、戦う気力を奪う魔弾を放ったはずだ」

「あたしの体は、魔法も物理も無力化出来るのよ」

「相当なタフだなぁ。では、ヘキ、行ってこい! 」

「はいにゃ! 」

 ソツがヘキに合図を送った。

 そして、大ジャンプをしてタトー殴りにかかる。

「黒猫パァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァンチ! 」

 しかし、タトーは、ギュッとしゃがむ。

 そして、右ストレートでヘキの左脇腹を殴った。

「三毛猫拳! どりゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ! 」

「ぶにゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ……」

「ははぁぁぁぁぁ…………」

 ヘキは、血を吐き出しながら白い天井の激突。

 そのまま、タトーの足下までぼろっと剥がれ落ちた。

「………………………………………………………………………………………………………」

「よし! 」

 タトーは、息絶えたヘキを見てドヤ顔。

 しかし、ソツは許せなくなるくらい怒っていた。

「何てことをするんだ、魔法少女! 」

「え!? 」

 タトーは、ドヤ顔が消えて驚いた表情なる。

「魔法少女よ。これは、法に反するくらいの失態だぞ! 」

「て…………ことは? 」

「試練は不合格だ」

「お待たせしました! 」

 タトーの後ろに緑の軍服姿のブラックドッグが二人やって来た。

 緑の軍服のブラックドッグは、タトーの両腕に手錠をかける。

「では、行くぞ! 」

「………………」

 そして、緑の軍服のブラックドッグとタトーと共に、牢獄へと移動させられた。



 

 

 

 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る