宵の明星
マナーモードで揺れる目覚ましにて、スマホをぐっと抱いて山上は起きた。
千本木をけして起こさないようにそーっとベッドから抜けだし、足音も立てず着替えを持って洗面所脱衣スペースに向かうと早着替えをして荷物をそろそろと手に取り玄関へと運んだ。
──これ以上はダメだ。
よく頑張ったと山上は自分を褒める。大人だ私はと褒めたたえたい気持ちだった。
期限は守ったし、自分のことも守らねばいけない。
「さよならちがやちゃん」
すっかり荷物を担ぎこんだ山上は、彼女の肩にまで布団をかけ直してあげるとその部屋を後にする。
鍵は、ポストの中へと入れた。
明け方の空にコシャンと金属の音がした。
ひゅうと冷える空気が自分の肩を冷やしていることに千本木は気付く。
羽毛布団がずれているなとズイズイ、引き寄せてその軽さにまばたきをし、腕をベッドに這わせる。
「……冬子さん?」
その声は寒さに震えているように響いた。
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