5-3

 

 休日ゴロゴロ本読みデイ。あるいは動画を見て英気を養う日は、お昼間に山上のリーネへと届いた通知及びメッセージで一変した。

『山上さんお助け〜』

 休憩時間なのかそんな頃にそんな日に、千本木から連絡が来たのである。別にもう友だちであるから、それは構わないとしてこれは一体どういうことかと、パソコンで動画は流したまま、思ったこともそのままメッセージに打った。

『なんですか』『私に出来ることは限られてると思いますが』

『被験体に一週間なってくれませんか!』

 被験体という言葉はどこから来たんだか。

 山上はひとりシニカルな笑みをして、スタンプ一覧を開いた。

『(分かるように言ってくれ、の長兄スタンプ)』

『店長からメニュー考えてみろって』

『なんかすごくないですかそれ』

『いえそんなんじゃなく』とすぐに来て、続けて『将来的に色々って話してて』と来た。

 千本木の家の棚にあった本たちの中でも、ほぼ百パー自分には関係ないであろう本達は、大人の力も借りて努力をしてきた形の現れだったようだ。

『一週間通うってきつくないですか私』

『そこでですね』

 続けてきたメッセージに、身を固くした。

『私ん家泊まりませんか!』

『こわいです……』

『どうしてですか?』

『私そんな大それた人じゃないですし……』

『前の食レポすごく嬉しかったんです』

 その思考も勢いもわからなかったが食レポのそこはわからなくもないようで、小さく息を吐いた。

『どんな子たちのよりもで、なんなら両親に近くて』

 色んな被験体がいたのが判明するが想像の範疇だった。大した驚きもない。

(両親つまりなるほど詳しいということか)と理由を押し測ることで、本による語彙力増加とそれを積み重ねた年の功とは言えるかもしれなかった。

 山上としては、まあまあわからなくもない。その段階に達する。

『あと山上さんが好きなので』

 山上は『????????』とメッセージ欄に打ち込んでやめた。

 若者らしい誘い文句だなと思うとそっけなく流して、もうこれは諦めてひとまずは受け入れるかどうかの段階に入った。

『期間にもよります』

『二月の最初までには』『空いてる日はありますか?』

 そうして千本木へとこまごま処理した勤務表を山上は送ると、パソコンの前から移動してベッドでごろんと横になった。

『千本木さんがよさげな一週間決めてください』『目立った予定ない日がほぼなので』

 いつだって予定は家で本を読んだり散歩したり、家族の買い物に付き合ったり程度なので、本当に何でもよかったのだ。

 千本木へ丸投げ。一週間の被験体となり得るかを決めさせるためとはいえ、雑すぎたかなと更にメッセージを打ち込んだ。

 人の家に泊まるとか面倒ごとじゃないかとかお金周りどうするとか、山上は思いつく限りのことが多すぎたので、深いため息を吐いた。

『でも月末はつらい。本いっぱい来るので』

 これで千本木のお眼鏡にかなう週が無ければ、被験体はお流れにする。

『じゃあ中ほどの十五日から、二十二日までとかどうですか』

 勤務表の実物をカレンダー代わりにして見て、月曜日から一週間のようだ。区切りとしても丁度良く、翌週より忙しくなく悪くないチョイスであった。

『わかりました』

 遠すぎてはヘタれてしまいそうであるし。

 下手に遠すぎない分心構えがギュッと締まって丁度くらいだなと思った。

『日程はそれで。あとちょっと話煮詰めましょうか』『私は結構米派です』


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