好きの証明

 

 背表紙のフォント達が好きだ。

 分厚く相撲取りのように安定感のある角のしかくい、どっちりしたあの文字は可愛くて。エレガンスに書き始めと終わりが、ヒールでも履いたように背伸びしてるフォントが使われてると気品があってまるで英国紳士を彷彿とさせる。

 長ったるいタイトルのものは背表紙の中に綺麗に収められていたりすると、ちょっとテンションが上がった。


 本の中はいろんな世界で起きた、山有り谷ありの人生の一過程が綴られていて。

 そして私はどうして、この物語の人たちみたいになれないのだろう、と思って。

 私はなにもしてないからなぁ、と分かる。


 千本木ちゃんは、とても眩しい。自分があんな目をしてたのはいつだっけ、と思うだけにして働くのに戻った。

 好きなのを仕事にしたのは確かだけど、好きっていうよりそれしか無かったから、なんじゃないかな。


 好きであることの証明って、どうしたらいいんだろう。コンテンツにお金を払うこと? 同人誌を作ること? グッズをたくさん持ってるとかあとは、考えを発信すること?

 レシートみたいに誰かが発行して、証明してくれればいいのに。

 二冊持ちみたいに並べて飾っとくだけで示ればいいのに。

 これだってものを何も持ってなくても、私はあなたが大好きです、っていうことを。

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