第49話 天神竜討伐に向けて
薫たちが話をしていると会議室の扉がコンコンと叩かれる。
「ただいま戻りました」
「ふぃー、もう疲れたよー」
「し、失礼します」
扉を開け蓮と葵は慣れたように、萌香はオドオドしながら中に入ってくる。
「あ、七瀬さん帰ってたんですね。それじゃあその方が吸血鬼…」
暑さのあまり服の襟元をパタパタとさせている葵に対して、蓮は薫の姿を見つけると横にいる吸血鬼を見る。
「あぁ、とりあえず後で紹介するから席についてくれ」
二人は促されるようにして自分たちの席に着き、ルルシュも薫の横に座る。
「ボアの方はどっだった?」
「特に被害の出ることなく捕まえてくることができました。とりあえず十匹ほど捕まえてきたので今は萌香さんが用意してくれた場所で放し飼いにしています」
「そうか、二人ともご苦労だったな。萌香もいきなりお願いしたのにすぐに用意してくれてありがとな」
「い、いえ私は特に何も…。作ってくださったのは他の皆さんなのでお礼を言われるようなことは…」
未だ自分がこの空間において場違いだと考えている萌香は憧れの薫に直接お礼を言われ顔が赤くなる。
「食料問題はなんとかなった。東京全域にいたモンスターもほぼ全て討伐した。そしてあらかた仲間も増えた。目標にしていた三つのことは達成できたから俺たちは次に移るぞ」
「次は神奈川あたりでもいくか?」
「いや、それは後回しだ。俺たちは今から竜を討伐する」
薫の言葉に皆の顔が引き締まる。
「どうやって倒すの?実際見てきたけど遠目で見るよりかなりデカかったよ」
「どうやってって普通にだよ普通に」
「だからその普通がなんなのかって聞いてんだよ」
「空飛んでるところを撃ち落として皆んなで囲めばいけるだろ」
「そんな適当な作戦で戦うのか?お前アホだろ」
「まぁ、俺がいればなんとかなる」
「なんか雑すぎない?もっと作戦練った方がいいんじゃない?例えばその竜をどうやって撃ち落とすのかとかさ」
「とりあえず霧奈と他数名の遠距離に対応できる能力者で固めて撃ち落とすしかないだろな」
「そんなんで落ちてくるの?結構硬そうだったけど」
「無理だろうな。有象無象の奴らだと傷一つつけることもできない」
「それじゃあ本当にどうするの?」
「傷がつけられなくてもあいつはちょっかいかけるだけで降りてくるから大丈夫だ。そして降りてきたところを全員で叩く」
「適当だなー」
「実際これで前回は倒してるからな。今回もなんとかなるだろ」
「でもそれで前回はたくさん被害が出たんだろ?それならその反省を活かしてもっといい作戦考えろよ」
「大丈夫だ。今回は俺とルルシュがいる。万が一死者なんてださねーよ」
「うむ、妾がおればあの程度のモンスターなどとるに足りぬ。それゆえ大船に乗ったつもりでおるとよいぞ」
「ほんとかよ」
「心配だなー」
「ちなみに今戦えるメンツは何人くらいいるんだ?」
「そうだね、今この場所にいるのが八百人くらいかな。他にも東京全域に散らしている人たちを集めれば二千人は超えると思うよ」
「それなら二百人ほど選別して戦う準備をさせろ。残った奴らにはこの場所の防衛と復興作業の方にわけておけ」
「まさか二百人で戦うんじゃないでしょうね?」
「それだけいれば十分だろ。ちなみに俺とルルシュはギリギリまで戦闘には参加しないからな。今回はお前たちの成長を目的にしてるんだ。俺たちが出しゃばると意味ないからな」
「それ私たち死なないでしょうね?」
「同じ誤ちは繰り返さねーよ」
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