第38話 吸血鬼の館

 薫の命令を受け各々は準備に取り掛かる。蓮と葵は戦闘員を三十人ほど連れて埼玉へと向かい、霧奈と澪准は食料を持って東京の西側へと向かう。瑠華はというと萌香と少し話し合った後に幾人か連れて稲城市へと出発する。


 薫はすでに準備ができていたのか皆んなより一足早く出発すると目的の建物がある群馬へと向かっていた。


◇◆◇◆



 薫が拠点をでてからおよそ15時間が経過した。薫が拠点を出たのが朝早かったために目的の場所に着いたのは夜中を回る前のことだった。


 薫はここに来るまでに最短ルートである直線に来たために木々や畑を迂回することなくそのまま突っ走り、モンスターと出くわせば相手がこちらに気づいた瞬間に殺すという力技で来たのだが、薫は自身の想定よりも遅く着いたことに自分の体の未成熟さを痛感していた。


 薫は自身の右手を見つめながら拳を作っては開いてを繰り返していた。


 どれほど続けていただろうか。薫はポケットから取り出したスマホを確認しているとようやくその時間がやってきた。


 スマホの時計が0時を表した時、先ほどまで何もなかったはずの大きく抉られた地面の上にぽつりと古びた館が現れる。


 薫はそれを確認すると館へと足を進める。


 ボロボロになった門を軽く押すとギギギギギと音を立ててそのまま大きく開く。そしてその足は一歩一歩敷地内へと入っていく。玄関の扉には鍵がかかっていたために鉄でできた扉をそのまま拳で破壊すると館中に響き渡るようにして倒れ、床に溜まっていた埃が舞う。


 空中に舞う埃から口元と鼻を庇うようにしながらそのまま中へと入って行き、たくさんある全ての部屋を無視してそのまま奥へ奥へと足を進める。

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