第36話 目的の人物

「それで探したい人っていうのは誰なの?」


荻原おぎわら 直哉なおやってやつと笠間かしま 亮平りょうへいの二人だ。おそらく二人とも東京のどこかにいるはずだからできれば仲間に引き入れたい」


「その荻原直哉と笠間亮平って人も薫くんの仲間だった人たちなの?」


「あぁ、直哉は第二部隊の部隊長で亮は第四部隊の部隊長だ。直哉は守りに特化した能力を持っているから主に拠点の警備を担当してもらっていた。亮平の方は器用貧乏って感じでどんな相手に対しても割と有利をとった状態で戦える。二人とも東京出身で確か直哉は八王子にいて、亮は稲城市の近くにいるはずだから適当にモンスターを倒したながら探してくれ」


「うーん、それ結構難しいんじゃない?」


「大変かもしれないけど頑張ってくれ。ちなみに二人は北の方から順々に制圧を頼む。制圧が終わり次第連絡をくれればそこに人を派遣するから」


「おっけー」


「了解」


 二人の返事に頷くと薫は蓮と葵の方に振り向く。


「ヘビーボアの見た目は大きな猪って感じだ。角が普通の猪に比べて太くて長いからそれにだけ注意してくれ。後は直線上にさえいなければ攻撃が当たることはないから横から軽く攻撃して気絶させてくれ。なるべく怪我をさせないように頼むぞ」


「あのー、その大きな猪をここまでどうやって運べばいいんですか?」


「気絶させたヘビーボアを縄で縛り上げて適当な台車にでも乗っければいいだろ。人は何人連れて行っても構わないからなるべく多く連れてきてくれ」


「なるほど、それならどうにかなりそうですね。それじゃあ三十人ほど連れて行きますね」


「それで薫くんはどこに行くの?」


「俺か?俺はな群馬の方まで行こうと思う」


「えっ、そんな遠くまで行くの?それ大丈夫なわけ?」


「問題ないだろ。目的の相手がどこにいるかわかってるし、モンスターを倒さず最短距離で行くつもりだからそこまで危険なことにはならないはずだ」


「その相手っていったい誰なの?」


 薫は少し悩む。これは言うべきなのだろうかそれともまだ黙っておくべきなのだろうか。しばらく考えた末に結局は後で会わせる予定なのだから言っても問題ないかと結論づける。


「吸血鬼だ」


「「「はっ!?」」」


 薫のその言葉にその場にいた全員が訳のわからないという顔をしながら同じ声を漏らす。


「それって吸血鬼の能力者ってことだよね?」


「いや、正真正銘の吸血鬼だ」


「それモンスターってことだよな?俺もそっち行ってもいいか?」


「邪魔だからやだ。そもそもお前にさっき役割与えただろ」


「えー、俺も吸血鬼と戦って見たいんだけどなー」


 澪准は興味津々といった感じだが、横にいた葵がそれを止めようとあたふたしている。


「でも、私も一人じゃ危ないと思うけど。いくら七瀬くんが強いからっていっても相手はモンスターなんだから油断しないほうがいいと思うの。それに吸血鬼なんてゲームとかアニメだとよく強いモンスターとして設定されてることが多いし、倒すならもう二人くらい連れていくべきだよ」


「んあ?別に倒すつもりはないぞ」


「それじゃあどうする気なの?まさか…」


 薫がニヤリと笑う。霧奈はそのことに思い至ると唖然とし、瑠華に助けを求めるように視線を送る。しかし、薫のことをよく知る瑠華はその笑顔を見た瞬間呆れたように溜め息を吐くと左右に頭を振る。


「その吸血鬼を仲間にする」

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