第八話
「ねぇ、三咲。あんた橘にデート誘ったってホント?」
四ツ葉が三咲に詰問している。
三咲が橘に食事に誘ったことクラスを飛び超えて学年中でも話題になった。
それだけの話題性が色々と彼女にはある。
天才ピアニストの母親、その美貌、普段の学校生活態度。
「別にデートではない。ただ食事に誘っただけだ」
「それってデートだよね!?何、あんたワタルに気があるの?」
教室がギスギスした雰囲気になってる。
「四ツ葉さん。もう授業の時間だけど一緒に受ける?」
浮本先生が割って入った。
「ちっ!!」
四ツ葉は舌打ちをし、その場を後にした。
(何か雲行きがあやしいなぁ)
俺は不安になる。
▼
体育の時間。校庭へ移動する。体育の時間は男女で分かれている。
男子は校庭、女子は体育館で授業を行う。
その際、何やら探している三咲を見つけた。
「何か探し物か?」
「…別に」
素っ気なく答えられたものの何か悲しそうだ。
そしてある程度予想もつく。
彼女は体育靴を隠されたのだ。
「体育靴。なくしたのか?」
誰かが靴を隠した。
そして、その誰かは見当がつく。
「…探せば見つかる」
「俺の靴使うか?」
「お前と私のではサイズが違うだろう。でもその心遣いは素直に受け取るよ」
三咲はムリヤリ笑顔を作ってる様に見えた。
「隠したのはのは四ツ葉か?」
「…彼女がやった証拠はない」
「あいつは橘が好きだからな」
「それは彼女だけではないだろう」
確かにそうだ。
そして、奴はそんな事をするタイプではない。
いい意味でも悪い意味でも直情型で姉御肌の四ツ葉はこんな陰湿な事はしない。
エロゲーで何回もプレイしたからこそ分かる。
「私は、他の人達の様に橘に強い好意を抱いてるわけではないんだ。ただ少し気に
なる程度だ」
「……」
「でも、それでも…」
三咲は言葉を詰まらせる。
「私には、勇気を、出したんだ…精一杯の勇気を…」
女の涙を黙って見過ごすのは男のする事じゃない。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます