第六話
帰り道、公園の前に通りかかった。
「12,13,14」
不思議な光景に思わず足が止まる。
年齢からして7,8才くらいだろう。
そんな女の子が竹刀を振るって素振りをしていた。
「ふぅ~疲れたからちょっと休憩しよ」
どうやらまた再開するらしい。
「君、こんな所で何してるんだ?」
俺は尋ねてみた。
「!変質者」
「おいおい。いきなり変質者とはご挨拶だな」
警戒心が高いな。
「俺は光一高校に通ってるんだ。ほらこの制服がその証拠だ」
「お姉ちゃんと同じ学校だ」
「君のお姉ちゃんも俺と同じ高校か」
そういうとこの女の子は警戒心を解いた。
「ところでさっきここで何してたんだ?」
「剣道の練習!」
剣道か。だから竹刀を。
「でも公園で練習しなくても家とかでやればいいじゃないか」
「お姉ちゃんが昔よくここで練習していたからわたしもマネしてたの」
どうやらこの子はお姉ちゃんを慕ってるらしい。
「いたいた、あれがここで竹刀振るって子供だ!!」
「今は振るってないじゃん」
「でも竹刀持ってるじゃん。それだけでも取れ高あるぞ」
二人組に軽そうな男子高校生がスマホを手に幼女に向けた。
「ねえねえ、君!その竹刀で早く素振りしてくれない?」
「え、え、でも…」
「これYOUTUBEで上げれば結構な再生回数とれるぞ!」
「確かに公園で子供が素振りをするって動画は受けるだろうな」
(何て身勝手な奴らだ)
俺は憤りを覚える。
明らかにこの幼女は拒否反応を示してるのにも関わらず、自分の勝手な欲望のために
他者を顧みない。
「おい。この子が嫌がってるだろ。今すぐそのスマホおろせよ」
俺は堪らずこの二人組に注意した。
「はあ?何だ、おめえは。邪魔だから消えろよ」
「ついでだからこいつも写しちゃえば?」
「お、それいいね~」
ブチッ
俺の堪忍袋の緒が切れる音がした。俺は幼女の方を振り返った。
「すまない、この竹刀貸してくれないか?」
「え?う、うん」
差し出された竹刀を手にする。
「何、お前が代わりに素振りする…ゴ!??」
俺は軽くスマホを持ってる男の頭を竹刀で叩いた。
「てめえ、何する…バ!??」
更に俺は次々と追撃する。
「ま、待て俺が悪かっゴ!!!」
そして重い一撃を最後にくらわした。
男はその場で蹲った。
俺はもう一人の男にも制裁を与えようとした。
「ひ、ひぃ~!!ごめんなさ~い!!!!」
一目散に蹲ってる男を見捨てて去った。
「ありがと、お兄ちゃん!すごく強いんだね!!」
「まあ、そこそこ」
「わたしいつもここで練習してるから、お兄ちゃんもつきあってよ!!」
「ああ、いいぞ」「やった~!!」
幼女は喜びで飛び跳ねた。
そこまで喜ばれると悪い気はしない。
「コハル~そろそろ帰る時間よ」
「あっお姉ちゃん!」
どうやらお姉ちゃんとやらが迎えに来たらしい。
「ってお前…」
「あっ、君は」
何とこの幼女の姉は二見 サユリだった。
「阿部くんだよね?何でコハルと…」
不安そうな表情を見せる。
「お兄ちゃんが助けてくれたんだよ!!」
「助ける?」
「うん!悪いお兄ちゃんたちから助けてくれたの!!」
「そ、そう」
事態をあまり呑み込めない様だったが一応は納得してくれた様子だった。
「妹のコハルあ何か迷惑を掛けたようでごめんなさい。お礼はさせていただきま
す」
「いいよ、お礼なんて」
「お兄ちゃん!次は練習つきあってね!」
「ああ、いいぞ」
そして俺は二人の姉妹を見送った。
(しかし、二見に妹なんていたっけ?)
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