第五話

「な、な、何をする!!」


三咲がさっきまでの仏頂面と打って変わって戸惑いの表情を見せ、蹴りを放つ。


が、俺はあっさりと止めた。


「ははははは!残念だったな。お前のケリは俺には届かんぞ!なんせ俺は通信空手

を取得しているからな!」



「このことを教師に言いつける!そしてお前をこの学校から追い出してやる!!」


「もしそんな事をすれば学校中で三咲の下着が青色だと言いふらす!!」


「この下種め!!」


三咲が軽蔑した目と悔しそうな表情をしている。


(その表情そそるな~)


俺は何とも言えない感情に支配されていた。


「まあいい。といらえずこの学校の案内をしてくれ」


「断る!何が『まあいいだ』。私は全然良くない!」



「おれの言う通りにしてくれればお前の下着が青色だという事は、墓場までもってい

く」


「人の下着を黒歴史扱いするな!!他に女子生徒だって同じようなものだろ!」


三咲はゲーム内でも滅多に出さない声量を張り上げる。


「分かったよ、じゃあ学校の案内をしてくれ」


「どれだけ学校の事が知りたいんだ。勝手に一人で彷徨ってろ」


「一人で勝手に下着の色を言いながら彷徨ってろ?分かった」


「何もわかってない!」


こいつ面白いなぁ。


「なら条件だ」


三咲が条件を出してきた。


勿論そんなモノ守る気はないが、聞いといてやろう。


「何だ?」


「学校の案内をしてやる。そのかわり、二度と私に話しかけるな!」



「分かった」


やはり守れそうにないな。


ということで三咲に学校の案内をしてもらうことにした。



一学年の階、二学年、三学年の階、職員室、体育館、保健室など教えてもらった。


「この学校って意外と広いよな」


「……」


無視された。


「授業、すっぽかして案内してけど大丈夫か?」


「私はこんなことしょっちゅうだし、何よりお前が案内しろと催促してきたんだろ。

文句言うな」


「いや、心配してるなは三咲じゃなくて俺の事」


「知るか!」


とまあ、こんな掛け合いをしながら音楽室へ着いた。


「ここが音楽室だ」


「俺とお前が初めて出会った場所か」


「キモイ」


キモイと言われた。ショックだ。


「よくここにいるのか?」


「まあな」


「先生達に怒られないのか?」


「呆れて何も言われないよ」


実際そうなのだろう。教師共に何言われても気にするメンタルの持ち主ではない。


「案内はこれで十分だろう。約束通り私に今後一切話しかけるな」


そう言って三咲は去って行った。


ちなみにその後、俺は授業をすっぽかした事で浮本先生に怒られた。




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