第二章・異世界魔王の寝室で(3)

再び目が覚めたとき、自分がどこにいるのか一瞬分からなかった。


古城のような石壁。


価値の見当もつかないアンティークな家具。


高級ホテルのような優雅な内装。


ここは?


昨夜のことを思い出す…


(そうだ…あの女の子…ティエルとか言ってた)


ふかふかで温かいベッドには俺しかいない。


ただ…高貴な香水の残り香をふと感じて、昨晩のことが夢ではないと思えた。


起き上がると、全身に痛みが走った。


治りきっていない傷が痛んでいるようだ。


体中に包帯が巻かれ、少し鉄臭い薬品のにおいがする。


(ティエルに助けられたのか…?)


そう思った瞬間、なんだかちょっと恥ずかしくなった。


恐怖と苦痛に怯える俺を、優しく抱きしめてくれたティエル…


(かわいい子だったな)


柔らかく冷たい彼女の裸体。


思い出しただけで、顔が熱くなった。


(それにしても…ここはどこなんだろう?)


俺が寝かされていた部屋は、国王の寝室のように壮麗だった。


置かれた家具や小物は、一つ一つがアンティークで価値ある名品のように見える。


カーテン、ベッドのシーツ、テーブルクロスに至るまで、華やかな紋様が施されていた。


部屋全体にはレトロで重厚な印象が漂っている。


窓には高品質なガラスが用いられており、その窓からは日光がまるでスポットライトのように降り注ぎ、部屋を明るく照らしていた。


窓の外には庭園が広がっており、そこからは小鳥のさえずりが澄んだ空気を通じて聞こえてきた。


俺はベッドから降りて、よろめきながらも立ち上がった。


体はまだ回復しておらず、包帯を巻いたあちこちが痛みを訴えている。


しかし、窓から差し込む柔らかな日光が、俺を外へと誘うようだった。


ゆっくりと大きなガラス窓に近づき、力を込めてそれを開けた。


冷たい朝の空気が部屋に流れ込み、痛んだ体をいくばくか慰めてくれる。


窓を開けると、目の前に広がったのは、高い塔の頂に設えられた空中庭園だった。


足元からすぐに広がるこの庭園は、まるで空に浮かぶ島のように、周囲の雲海に囲まれている。


視界は驚くほど広がり、地平線の向こうまでずっと続いているように見えた。


庭園には色とりどりの花が咲き誇り、緑豊かな葉が陽光を受けてきらめいていた。


花々は微風にそっと揺れ、その動きに合わせて繊細な香りが空中を漂っている。


庭園の中央には、さざめく水の音が聞こえる大きな噴水があり、光を受けて虹のように色とりどりに輝いていた。


水気が時折風に乗って顔に届き、その冷たさが朝の新鮮な空気と合わさって心地よい。


噴水の周りには緻密に手入れされた花壇がある。見たこともない、美しい花。


庭園から見下ろす景色は圧巻で、一面の雲がまるで海のように広がり、時折その隙間から見える地上の景色が、別世界のように思えた。

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