第57話『恐怖! 闇ショタ襲来!』
さて闇ショタとは何か。
という話になってくるが、言うほど難しい話じゃない。
ただ闇属性が強いタイプのショタというだけだ。
じゃあ闇属性ってなんやねんと言われたら、魔法とか武器とかそういう話じゃなくて、性格の話だ。
とにかく腹黒かったり、ヤンデレチックだったり、メンヘラチックだったりね。
そういう対人関係が終わってるタイプのショタが闇ショタだ。
まぁとは言っても私が勝手にそう考えているだけだから、違うよって言う人は私に教えてくれ。
ここ、異世界だけど。
次元連結システムのちょっとした応用とかで、声を届けて下さい。
さて、そういう戯言は良いや。
とりあえずは闇ショタルイ君について語ろう。
闇ショタというからにはルイ君も闇なる部分がある訳だが、彼の闇は基本的に表には出ない。
出てくるのは主人公こと、ヒロインレナちゃんと関わる時だけだ。
しかもたまにしか出てこない為、攻略しない限り、光属性のキャラと勘違いするわけだ。
しかし、彼の本質は間違いなく闇なのだ。
そう。彼はこの世界全てを憎んでいる。
自分の様な物を生み出しておきながら、のうのうと生きている人間たちが憎い。
そんな風に考えて、この世界の全てを壊す為に力を求めて学園に入ってきた。
しかし、偶然レナちゃんに本性を見られてしまい、そこからレナちゃんは彼の過去を知り、彼の心を癒すいつものお医者さんムーブが始まる訳だが。
だが、しかしである。
おかしいのだ。
何せこの世界に来てから、私は彼の様な子。つまりは戦争で利用する為に幼い子を改造して使う様な組織は全て潰してきたのだから。
彼が闇落ちする理由が無い。
つい最近だって、いくつかそういう組織を潰してきたけど、改造された子はいなかったし。
みんな攫われたばかりという感じだった。
いや……でももしかして、攫われた段階で何かあったという事もあるのだろうか?
うーん。こんな事なら、見つけた子供一人一人をちゃんと見れば良かった。
その地方にある孤児院に入れるか、親元に帰るか子供に選ばせてたけど、その前に精神チェックもするべきだったのか?
いやでもなぁ。
私、乙女ゲームのヒロインじゃないから、人の心とか癒せないし。
じゃあ、どの道駄目か。
「シーラサマ」
「ん? はい。どうかしましたか?」
「……シーラサマは五年前の事を何か覚えていますか?」
「五年前……?」
いきなり微妙に昔の事を問われ、私は足を止めた。
しかし、ちょうどルイ君を寮へと案内している最中だったので、話すならまた後でにして欲しい。
と、私は伝えようとしたのだが……。
「あー。お話は寮に着いてからでも」
「何か覚えてますか?」
駄目だこりゃ。
RPGの村人よろしく、回答するまで同じことを聞き続けるタイプの奴である。
しょうがない。先に進める為にも何か答えるか。
「特別な事は何も。申し訳ございません」
「……そうですか」
何? いきなりしょんぼりするじゃん。
そういう可愛いアピールしたって、全部演技なの私は知ってるからね!
……でも、本当に演技なのだろうか。
違ったら可哀想だし。私はとりあえず近づいて、空中に浮きながらルイ君の頭を撫でて笑う。
「何か、ルイ君には大切な思い出がありましたか?」
「はい。とても大切な思い出が」
「そうですか。それに私も関わっている?」
「はい」
真っすぐに私を射抜きながらハッキリと言った言葉に、私はふむと考える。
五年前。五年前? 何かあったかな。
あー。もしかしてアレかな。レナちゃんの家の近くで、子供を兵器に改造する組織の建物を見つけて、全部吹っ飛ばした奴かな。
でも、あの時助けた子は女の子ばっかりだったから、ルイ君は居なかったし。
というか、今まで助けて来た子の中でルイ君みたいな子は見た事が無いんだよな。
いや、凄く似てる子は居たけど、女の子だったし。
違うよね。
あっ! もしかして、姉か妹とか!?
「一つルイ君が関わっていそうな事件を思い出したのですが……」
「っ! それは!?」
「えとですね。ある悪い組織がおりまして」
「はい!」
「それを潰した時に」
「っ!!」
「ルイ君によく似た子を助けたんですね」
ルイ君は激しく首を縦に振る。
なるほど。これが正解だったか。
「その子がきっとルイ君のお姉さんか妹さんだったと思うのですが……」
どうでしょうかと聞く前に、ルイ君は酷くがっかりした様な顔で私を見据えた。
違うのか!!
え!? あれ? でも途中までは合ってたんだよね?
じゃあ何が違う?
実はあの中にルイ君が居た……?
いやでもそんな訳無いよ! だってあの時助けた子全員女の子だったもん!
全員裸だったんだよ!? 間違える訳がないよ!
「……やっぱり、そうなんだ」
「ルイ君?」
「シーラサマにとって、大切な子供は、あの子だけなんだね」
「あの子……?」
「レナ」
なんでここでレナちゃんの名前が!?
まさか聖女だとバレている!?
「色々と調べたんだ。あれから。シーラサマが綺麗だって言ってくれた長い髪も切って、バレない様にって気を付けて、シーラサマは特別な方だからって、人ではないから、一人一人の事は見ている事が出来ないんだって言われて、それで、諦めてたのに。あの子だけは違った。あの子だけ、あの子だけは傍において、大事にされてる。僕と何が違うの? 魔法かな。でも魔法は僕だって上手く使える。なら何? 可愛いから?」
「えと、ルイ君?」
一人でブツブツと分かる様で分からない言葉を呟いているルイ君に私は話しかけると、ルイ君はあのゲームの画面越しに見た闇ショタしてる時の暗い笑顔で私に微笑んだ。
ひぇ
「ねぇ。シーラサマ。今度、あの子の髪を切ってあげるね」
「え?」
「同じになれば平等だもんね」
「いや、その……」
「ふふ。楽しみだな。あの顔に傷とかつけたらどうなるのかな。ふふ」
怖いよ!
窓の外を見ながら笑っても、そこに私は居ません!
誰も居ませんよー!!
アカン。よく分からないけど。なんかアカン事になっている様な気がする。
「えと。事情はよく分からないですが、この学園に通う子はみんな色々な事情があって、でも、みんな同じように魔法を学ぼうと……」
「分かってますよ。分かってます」
「……はぃ」
「同じになれば、仲良くなれますよ。同じになれば……ね」
同じってナニー!?
こ、これがリアルに触れ合う闇ショタ。
怖すぎでは?
何か言葉を間違えたら後ろから刺されそうな気配すら感じるのですが。
きょわい!!
「ま、まぁ。皆さんが仲良くしてくださればそれが一番ですよ」
「はい。大丈夫ですよ。シーラサマ。今日から仲良くしましょうね」
いや、私じゃなくてね?
生徒同士ね?
とは勇気が無くて言えず、私はお願いしますとだけ言って、再び案内へと戻るのだった。
どうしよう。
どうする?
これからどうすれば良いの?
分からないよ。誰か教えてほしい。
攻略サイト! はよ!!
「……」
返事が無い。ただの屍の様だ。
どっかに良い情報転がってないかしら。
私は首を動かさない様にしながら視線を走らせるが、当然何もない。
どこかに良い情報ないですか?
あー。そこにないなら無いですね。
ソウデスカ。
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