第11話『かくしてエルフという名の暴力装置は野に放たれた』
さて。キッフレイ大神聖帝国……いや、今はキッフレイ聖国に名前が変わったが、そのキッフレイ聖国での事件から二年ばかり時間が過ぎた。
私もすっかり……えと、何歳になったんだっけ。
よく覚えてないわ。
年かな。
見た目はオリヴァー君と出会った時から少しも変わって無いけれど。
そう、つまりは幼女エルフである。
いつ大人になれるんだろうか。最近はそればかりが気になってしまう。
……流石に本編開始前には大人になれるよね? 流石にね?
大丈夫だと信じよう。
信じるってのは大事だからさ。
という訳で一度見た目の事から離れて世界情勢の方を見て行こうと思う。
では祝砲準備。
……。
そろそろ良いかな?
はい! では、改めて! 現在の世界情勢ですが!!
な、なななんと! 世界で人間の治める国の殆どが協力し合って冒険者組合と学園を作る事になりました!!
つまり、国家間同士の争いが殆ど無くなったという訳です!
表面上は!
素晴らしい。やはりこれが正しい運命であったか。
しかもしかも! なんと、冒険者組合という名前はオリヴァー君が名付けたんだよね。
これで本来の歴史通りオリヴァー君が冒険者組合を作ったという事になるって訳だ。
うんうん。良きかな良きかな。
これでようやく最初の一歩が踏み出せたというものだよ。
あー。そういえば、どうして冒険者組合って名前にしたのか聞いたら微妙な顔してたけど、なんかあったのかな。
この世界って冒険者っていう名前の人たちは居ないからさ。
どこからやって来たんだろ。謎だ。
もしかしてオリヴァー君も転生者だったりして?
いや、まぁ、それは無いか。あっはっは。
まぁ由来とかどうでも良かっぺ。
重要なのはこれからよ。
各国を一つのする関係で、ついでに虐げられてるショタとかロリを拾ってきたけれど、最近その数が大分多い事になってましてな。
孤児院的な物を作ったのは良いけれど、運営資金が高すぎとかで色々な国の王様から文句言われてるんですわ。
そんな資金資金言わなくても良いじゃない。
未来ある子供が救われるというのに、何がそんなに不満だというのか。
私は悲しいよ。
という訳で、私は子供たちを養う為に独立する事にしました。
「も、申し訳ございません。シーラ様。もう一度お聞きしても良いですか?」
「はい。孤児院に居る子供たちを養育する為に、王城を出ます。私も冒険者となりまして、自給自足の生活を始めようかと」
もう一度言えと言われたから言ったら王様が椅子から転げ落ちて、床に倒れてしまった。
どうしたんだろ。
病気かな。
いや、過労かもしれないな。
気を付けてもらいたいものですね。王様にはウィルベン王国の人々を導くという仕事がある訳だし。
「では、長い間お世話になりました」
そして私は、大騒ぎをしている人達に頭を下げて、城下にある孤児院へと向かうのだった。
孤児院は、前世での教会の様な建物であり、神様っぽい銅像があったと思われる場所には謎の幼女エルフの銅像がある。
この像のモデルが誰なのかは考えたくない。
少なくとも私では無いハズだ。
だって、私は銅像になる様な真似を何もしていないのだから、当然だろう?
「しーらさま!」
「え? シーラ様?」
「シーラ様だ!」
自分にやたらそっくりな銅像をジッと見上げていた私は、孤児院の中から聞こえてきた声に顔を声の方へ向けた。
そして、視界の中には私に向かって走ってくる子供たちの姿が……。
ここでクエスチョーン!!
実際の年齢はともかく見た目は幼女エルフな私が、自分と同じかそれ以上に大きな子供に抱き着かれたらどうなるでしょうか!!?
正解は、当然地面に倒され、身動きが出来なくなる。である。
「ぐぇ!」
「わっ!? シーラ様!?」
「しーらさまー!!」
子供たちにより潰された私は、子供たちの声に何事かと駆けつけた大人たちの手によって助け出され、教会の中へ案内された。
そして温かいスープを飲みながら、私は心配そうにしている子供たちに笑いかけるのだった。
「シーラ様。ごめんなさい」
「ごめんなさい」
「もう! あなた達は! 前も同じ事をしてシーラ様を困らせたでしょう!? そろそろ反省なさい!」
「っ、ご、ごめ、んなさい」
元々アイヴィの所にいたメイドさんで、現在は子供たちの世話をしてくれているお姉さんたちは、怒っていますよというポーズで子供たちにお説教をしていた。
まぁ、私なら良いけど、他のお客さんにこんな事したら大変だからね。しょうがない所はあると思う。
でも、あんまり言い過ぎも良くないかな。
ほらメイドさん達のお説教で子供たちも泣きそうだし。
「あのー」
「何かございましたか!? シーラ様!」
「あー。いえ。その、もうそろそろ十分では無いかなと……思いまして」
「それは」
「ね、ねっ!? みんなもちゃんと反省出来たもんね!?」
「……うん」
「ごめんね。しーらさま」
「良いんだよ。みんなの気持ちは嬉しいから。でも、私以外の人には危ないからやっちゃ駄目だよ? いーい?」
「うん!」
「大丈夫!」
「ほら、反省出来てますし。ね? どうでしょうか」
「……」
無言。
前にアイヴィの所でも感じたけど、美人さんって無表情でいると結構怖いよね。
「だめ……ですか?」
「……はぁ。分かりました。シーラ様がそれで良いなら。私たちから言う事はもうありません。あなた達も。良いですね?」
「「はぁーい!」」
「はぁ。返事は良いんだけど」
「ご苦労お掛けしております。この様なお仕事を押し付けてしまって申し訳ないです」
「いえいえいえ! シーラ様からのお願いは嬉しいですから! 何も気にしないで下さい! ただ、己の不甲斐なさが情けないと感じているだけなので!」
「そうですか?」
「はい!!」
そうなんだ。
なんというか。プロフェッショナルって感じ。
ここまで真剣に仕事と向き合っているとは。
そして私は、皆さんの凄さを感じながら、今後の話をする事にしたのだった。
カップのスープを一口飲んで、真剣な眼差しで子供を含めた孤児院の全員を見据える。
「実はですね。孤児院への援助は負担が大きいという事で、打ち切られる事になってしまいまして」
「……そんな贅沢はしていない認識ですが」
「そうですね。私もそう思います。しかし、私たちが考えている以上に国を運営するというのは苦しい事なのかもしれません。それでも私が国の仕事を手伝えば捻出するとは言ってくれました」
「……」
「しかし、あまり甘えているのも良くないですからね。この際ですし、国にお世話になるのも止めて、こちらに住まわせていただいて、冒険者組合で仕事をこなし、お金を稼ごうかと思うのですが……如何でしょうか?」
突然、この家に住まわらせてくれとか、迷惑ってレベルじゃ無いけど、大丈夫だろうか?
まぁ駄目なら駄目で野宿しながら金を稼ぐだけだけど。
「私は素晴らしいご提案だと思います。子供たちもシーラ様と共に居られる事は嬉しいでしょうし。私たちとしても私欲の為にシーラ様を利用しようとする国家など離れた方が良いと思います」
「そうですか。それは良かった……皆さん。私もこの家に今日からお邪魔しますね」
「え? シーラ様、ここにずっといるの?」
「仕事もあるので、ずっと。という訳にもいきませんが、なるべく居ますよ」
「そうなんだ!」
「わーい!」
「ね。ね。しーらさま! きょうは一緒にねよ?」
「良いですよ」
「えー!? いいなぁー!」
「わたしも!」
「では順番に。ね?」
思っていたよりも好意的に受け入れてくれて嬉しい事である。
という訳で、新生活の始まりである。
シーラちゃん。社畜へ戻るの巻。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます