第11話 アリスティアとの握手と筆記試験
「アリスティア・ベル!」
思わず声に出ちゃった!
ヤバい! まだ名前も聞いてないのにフルネームを大声で呼んじゃった! アリスティアも想定結果に驚いてまわりで騒いでる人たちもみんなこっちを注目してる。
「え? あ、はい。私がアリスティア・ベルです」
「あ、あの……私ミーヤ・キャンベルって言います。お名前はさっき試験官が呼んでいたのを聞いて……私より魔力が高い人がいると思っていませんでした。これからの学園生活、よろしくお願いします」
とりあえず挨拶は基本だよね。試験官が名前を読み上げるルールがあってよかった。なんとか言い訳できてるよね?
それにしてもテンションが上がってしまう。ずっと楽しく遊んでいたゲームの主人公のアリスティアと今話してるなんて信じられないよ。
「こちらこそよろしくお願いします。王都は初めてなのでともだちになってもらえると嬉しいです」
そういって私に右手を差し出してくる。
こ、これって……基本的にこの『マジ・マリ』の世界では身分が高いものから挨拶するし、身分が低いものから握手を求めるなどあってはならない。
アリスティアが王子相手に握手を求めてトラブルになるっていう「おもしれ―女」のファーストインパクトが私を相手に差し出されちゃった!?
とりあえず私はアリスティアと握手する。
「えっと、握手は身分が高い人から手を差し出されない限りは自分からお願いしちゃダメだよ。私も貴族って感じじゃなくて騎士の家だからほぼ平民みたいなものだけど」
「あ、ごめんなさい。そうだったんですね。でも、騎士様の家の出身なんて凄いです」
「いや、それを言ったら今から会う人たちは全員私たちより身分が上の家の人のはずだし」
「フフフ、入学出来たらそうなっちゃうね。でも、私はあなたと友達になりたいな、ミーヤ」
こうして私は『マジ・マリ』の主人公であるアリスティアと友達になったのだった。
「あ~緊張した」
「ミーアもですか? 私もです」
入学試験の会場を移動しながら二人でお話する。最初の水晶球で20以上の数字が出なければ即足切りという話だったのであそこだけはクリア必須だったのだ。私が緊張してたのは「魔封じのミサンガ」がバレないかどうかだけど。
「アリスティアは次の筆記試験は自信があるの?」
アリスティアは緊張はしていそうな様子だけど……実はヒロインってこの世界でもめっちゃくちゃ勉強が出来る子なのだ。
「はい、しっかり勉強してきましたから。魔力持ちであると見いだされてから教会で牧師様に本を貸していただいていろいろと勉強しました。ミーヤは騎士家っていう事は騎士課なんですか?」
「あはは、運動神経がお亡くなりなってなければ騎士課でもいいんだけどお母様の血をひいちゃったのか全然だめで……」
はい、嘘です。でも現実世界の母親が私と同じ運動音痴なのは本当。ちょっとホームシック。
「そうなんですか? じゃあ魔法学科だったら私と一緒ですね。絶対受かって下さいね。私、王都に出てきたばかりでともだちもいないんで……」
「うん、お互い頑張ろう」
今度は私から手を出して二人で握手してにっこり。
やばい、大好きなゲームの世界でヒロインと友達になっちゃったよ。
二人で一緒に自分の田舎のことを話しながら次の筆記試験の会場に向かう。
私の田舎は元の世界の母方のおばあちゃんのいる田舎の話だ。この世界は西洋風だけど、植生だったり生き物は日本とあんまり変わらないから違和感なく話せてるよね?
「えっと……私が受験番号10番でアリスティアが20番か……ちょうどとなりだね。よろしく」
「はい、頑張りましょう」
手をギュッとグーにして自分の目の前で握りしめてやる気になっているアリスティアが可愛い。
いや~、この子のせいで世界がおかしくなるなんて信じられないけど、実際に今からたくさんの男子生徒を惑わせて学内の風紀を乱しまくるんだよな~……いや、惚れる王子たちが悪いんだ。身分違いの恋なんて創作物で見てれば楽しいけど、周りの人には大迷惑だ。
第二関門の筆記試験だけど、ここは心配ないはず! 私にはゲームの知識があるから! 筆記試験の内容もグレインに習ってちゃんと勉強してきたし。
筆記試験は全部で50問あったけど全問解答欄を埋めることはできた。グレインによると6割とれれば合格らしいので、8割くらいは取れる自信があるから受かると思う。
隣のアリスティアは私以上のペースでカリカリとペンを滑らせると時間が余ったのか答案用紙の上に突っ伏して寝ちゃってた。
こんなマイペースな子だったっけ? あ、プレイヤーキャラだからこの子の素がどんな子なのかはよく分からない部分があるなぁ。
合格したら一緒にいる時間も増えるだろうし、おいおい分かっていくのかな?
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