第10話 シン・ヒロイン アリスティア登場
グレインの部屋に居候するようになってからあっという間に1か月が過ぎようとしていた。
今私とグレインは最後の晩餐中。明日から私は王立学園での生活が始まる。
試験に合格すればだけど……
学園に入ると寮生活をすることになるのでグレインとは離れて生活することになる……もっとも魔法塔と学園は距離的に目と鼻の先な上にグレインは学園理事長でもあるので会おうと思えばすぐに会えるみたい。
グレインの部屋の中は私が生活することでずいぶん様変わりしてしまった。
グレインは魔塔主として最上階(!?)を自室と研究室に分けて贅沢に使っているのだが、この一ヵ月で自室スペースが広がり(魔術で物理的に壁を移動した!)室内をパーティションで区切ったりカーテンが取り付けられたりした。
最初の数日は猫だから猫砂におトイレをするのが平気だった(マリアさんが片付けてくれた)が、一旦人間に
いや、普通に無理だから! 猫になったら分かるって!
「美弥呼、学園に持っていく荷物は全部準備できたのか?」
「はい! もう完璧です!」
「そうか、ではいよいよ明日は美弥呼の入学試験の日だ」
そうなのだ。明日、私は王立学院の入学試験を受けるのだ。
「でも、本当に私で大丈夫なんですか?」
「大丈夫だ。この1か月、美弥呼はよく頑張った。それに美弥呼なら絶対に合格できる」
グレインが太鼓判を押してくれた。嬉しい。
「ありがとうございます、頑張ります! 学園に入ったらとにかく同じ新入生としてアリスティアさんと友達になってトラブルが起こらないように気を付けますね」
アリスティアは『マジ・マリ』の
「アリスティアが起こすトラブルが国の根幹を揺るがす」という月詠みの魔術師の予言によって、アリスティアに注意することになったグレインが学内にもう一つの目を作るために使い魔の魔法を使ったのが私とグレインの物語の始まりだった。
人間になったからにはアリスティアのお目付け役というか監視係をするのが私の役目だけど、友達になっちゃえばいいんじゃないかって思うんだよね。
ヒロインのアリスティアは正しいルートなら聖女として国を救うわけだし。多分根幹を揺るがしちゃうのは逆ハーレムルートのことだと思うし。
「ああ。じゃあ今日は早く寝ないとな。明日寝坊したら大変だ」
『はい、おやすみなさい』
「おやすみ、美弥呼」
猫になった私はグレインのベッドに潜り込む。
明日はいよいよ入学試験だ。緊張するけど頑張らないと。
入学試験が始まった。
今日の私は入学前なのに学園の制服を着ている。
白をベースにして凄く可愛いスカートとブレザーの制服だけど入学試験前に来てるのが変だよね。
ゲームでもこうだったけど試験に落ちちゃったらどうしたらいいんだろう?
最初は水晶玉に手を当てて魔力測定だ。
「では、受験番号10番ミーヤ・キャンベルさん」
あ、ちなみに学園ではミーヤ・キャンベルと名乗ることになっている。
グレインの実家であるクライン伯爵領の騎士家のご息女であるミーヤ嬢・16歳という設定だ。
この世界では不自然なミヤコを名乗らず偽名でミーヤを名乗ることになったため、
ついでに言っておくとこの世界の入学年齢は16歳ね。学ぶには結構遅いと思うけど乙女ゲーで恋愛するからこの年齢でいいんだと思う。ちなみに私はグレインから13歳くらいだと思われていた。
は、発育が悪いわけじゃないから!
日本人は若く見られるの!! ぐぐぐ、変身魔法でバンキュッポンになるべきか!?
残念ながら今のところ
「ミーヤさん? いないんですか?」
考え事をしていて返事が遅れた。
「あ、はい、は~い! ここにいます」
慌てて水晶球の前に進みでる。初めて魔法を使った日に触れたのと同じ水晶球。
「どうぞ触れて下さい」
茶色いローブを着た試験官が私に指示する。
ドキドキしながら水晶球に触れる。
ほんのりと水晶球が赤く光る。
「ああ、結構明るいな」「へぇ、赤ってことは火魔法か?」「小さいのに……飛び級か?」
外野がいろいろ言っているがとりあえず無視しよう。ちなみに小さいのは身長か? それとも胸か!?
「ミーヤ・キャンベル、魔力値158。合格」
とりあえず第一の試練クリア。私は左手につけているミサンガに軽く触れる。
グレインに貰ったマジックアイテムの1つ。
魔封じのミサンガ。装備しているものの魔力を10分の1に封じてしまう魔道具だ。
私は結局グレインから流れ込む魔力を自力で調節することができなかった。
そのままだと1000オーバーして今年の新入生の中でぶっちぎりの数字を叩き出して「あれ? 私なにかやっちゃいました?」ってなっちゃうので考えた結果魔力を封じることにした。
次の試験会場に向かおうとしていると後ろからどよめきが。
一人の女の子が300オーバーをたたき出したらしい。
「おい、今の見たか! 純粋な金色に光る水晶なんて初めて見た!」「それよりあの光り方だ! あんなに眩しく光るなんて」「でも、あの子の平民じゃないの?」
このセリフは……『マジ・マリ』でヒロインのアリスティアが水晶球に触った時の反応!!
顔が見たくて思わず立ち止まって振り返る。
そこにいたのは、学園モノ乙女ゲームには必須のヒロイン。入学試験なのにすでに制服を着ちゃってるのはご愛敬だけど、私も何度もプレイして自分で操ったこともある主人公であるアリスティアがいた。
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