第9話 メイド服は女子高生の憧れ(意見には個人差が……)

 変身したら全裸だった!!


「きゃっ……」


「きゃっ?」


「きゃぁぁぁぁぁっぁぁっ! ファイアーボーーーーール!!!」


 思わずご主人様相手にファイアーボールをぶっ放してしまった。ヤバっ!


 シュンッ!!


 かき消すように消える私のファイアーボール。ご主人様の魔法障壁で消されたらしい。


「焦らないで……すまない美弥呼」


 そういうとフワッとグレインに抱きしめられる。これはグレインのマント?

 そして私はそのままヒョイッと抱き上げられてしまう。


 お、お姫様抱っこ!?


「ここでは美弥呼の服は用意できないから一旦俺の部屋に帰るぞ」


 そういうとグレインは何かを口の中でつぶやくと、小声でテレポートと呟やいたようだ。


 ヒュンッ


 一瞬で周りの風景が変わり、目の前にはいつもご主人様と寝ているベッド。


「あ、あの、グレインさん?」


「大丈夫だ。訓練場も俺が不可視の結界を張っていたし誰にも見られないから」


 そういう問題じゃなくて……でも、裸でお姫様抱っこって……ちょっと恥ずかしい上に、ベッドのせいでイヤが上でも意識させられてしまう。


 いや、いつもはお互いに裸?(猫だけど)で寝てたんだけど……


……

………


 グレインが用意してくれたのはオートマターのマリアさんのメイド服だった。


「すまないが、今はこの服しかないからこれを着ておいてくれ」


 そういうとグレインは寝室を出て行った。


 綺麗に洗われてたたまれてるメイド服を着る。メイド服を着るのはオタクだった私にとってはちょっとした憧れ。

 こんな形でもメイド服を着れると思うとテンションが上がってウキウキしまう。


 鼻歌を歌いながらメイド服を着ていくがだんだんテンションが下がり、全部着終わった頃はお通夜状態。


 胸のところはブカブカで、お腹周りはピチピチどころか本当に無理しないと入らない……

 成長期! まだ成長期だから!! あと、猫の姿で油断して食べ過ぎた。毎日お腹いっぱい食べて寝てたから。


 コンコン……


「……美弥呼……入って大丈夫か?」


 ノックの音がしてグレインに聞かれる。この姿を見られるのはちょっだけど「どうぞ」と入室を許可する。


「美弥呼……本当にすまない。自分が変身する時はサイズが違うものに変わったことがなかったから服についてまで考えが回っていなくて……」


 グレインが頭を下げる。


「はぁ、見られちゃったのはショックですけど、グレインさんになら大丈夫です。それより『女の子は裸を見られたら結婚しないといけない』とかそういうルールはないんですよね?」


 ゲームの中に出て来なかった設定だから大丈夫だと思うけど。


「さすがにそんな風習はないが……美弥呼がいた世界ではそんなルールがあったのか?」


「いいえ、創作物の中にたまに出てくるぐらいですね」


 まあ、見られても見られ損ってだけならまだいいか。


「とにかく今回のことは申し訳なかった。すまない」


 グレインが頭を下げる。そうだよね。乙女ゲーだからラッキースケベシーンもないし。

 私たちの世界では普通に太ももが丸見えのミニスカートとか短パンで街を歩いてるって言ったらびっくりされそう。ああ、でもゲーム内の学園の制服は結構スカートと短いな。

 あ、私はどっちかという元の世界の制服のロングスカートは長いがすぎるタイプだけど。


「あ、謝らないでください。こっちこそ見苦しいものを見せちゃったって言うか……」


 あのスタイルのいいオートマターのマリアさんとか作り出した人だもんな……私の発展途上(と信じたい)の体を見てもなんとも思わないだろう。


 いや、だから黙って真っ赤にならないで~


 その後ギクシャクしながら今後のことを話し合った。


 とりあえず、私の黒髪黒目はこの世界では数が少なくてとても目立つので(東方にはいるらしい)、もう一度変身魔法で茶髪の緑目にすることに。


 しばらくはこの部屋でオートマターのマリアさんの弐号機、メアリーとして過ごしながらこの世界の常識を学ぶこと。


 1か月後の王立学院の入学試験で合格して、新入生として学園に潜り込むこと。


 私が使い魔であり異世界からの転生者であることは、私とグレインの二人だけでの秘密にすること。


 こんなところが決まった。世界で一番研究熱心な男が私の秘密を守って実験動物にもしないのは本当に人間が出来てると思う。

 そんなこんなで猫になったり人間になったりする私とグレインの奇妙な共同生活が始まった。


 あ、部屋から出るときは黒猫に変身してグレインと一緒に行動することになった。


 猫の姿なら多少おかしなことをしても使い魔だからで誤魔化せるしね。

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