第8話 初めての変身魔法(失敗)
あの後、いろいろと実験をしたけど、私は魔力はとんでもない量があるみたい。そして……
『グレイン様、結局私ってホースみたいなものでご主人様の魔力を放出する新しい出口が出来たみたいなものってことでいいんですか?』
「そうだな。ミヤコが魔法を使うたびに私の魔力がわずかだが消費されているのを感じる」
ということは私の魔力ってご主人様と同じプールから水を汲むみたいなものだから無尽蔵?
『えっと、私自身に魔力を貯めるのはどうしたらいいんでしょか?』
「いや、見てる限りホースに専念した方がいい。ミャーコの体のネコの魔力容量だと10の魔力でパンクするだろう」
ちょっとゾッとする。
無敵だけどご主人様抜きだとただの猫ってことか。
「あとは魔法の威力自体も俺の10分の1って感じだから絶対に過信しないこと。それと俺から距離が離れるほど伝達効率は落ちるはずだから気を付けて。とはいっても今年の入学試験にミヤコが出ても間違いなく合格できるだろうけど」
ん? さっきも聞いたけど入学試験って?
「ああ、言ってなかったか。ミャーコを学園に入れるための魔法試験は私とミヤコがいれば簡単にパスできるから、その準備のために今日は呼んだんだ」
『あ、あの、私って猫ですよ? 学園に入れるんですか?』
「実はミャーコを使い魔にしたのは感覚共有で学園内を見守るためだったんだ。だけどミヤコなら人間に変身さえすれば、普通に入学して学内を探ることもできる。少し危険な任務になるけどミヤコなら出来ると思うんだ」
そこまで見込んで貰ったら断れないにゃ! っていうか人間に変身できるの?
『人間に変身って、やっぱり変身魔法があるんですか?』
ゲームではそこまで便利な魔法は出てこなかった。だけど宮廷魔術師のご主人様なら出来ちゃうんだろうなぁ。
「ああ、変身魔法はある。歴史上、魔物になるほど歳を経た猫が人間に化けたという伝承も残っているし、魔族には人間に成りすまして街で暮らしているものもいるという。だから、変身魔法は厳重に管理されていて、学園では変身魔法については教えられていない。だけどミヤコには特別に変身魔法を習得してもらう」
『え? 私って変身魔法使えるんですか?』
「ああ、魔力回路が繋がっているから出来るはずだ。それにミヤコには俺がついてるんだから心配することはないよ」
ご主人様がチートすぎる件!?
『そうなんですね、じゃあよろしくお願いします!』
「変身魔法は精神を集中する必要がある。だから、ちょっと手を出して」
えっとこう……かな? 差し出した両手の肉球をご主人様に握られる。なんとなく恥ずかしい。
「パスが繋がっているけど体内の魔力を全身に循環させるから、右手(右前足?)から魔力を注ぐから左手(左前足?)から俺に戻すイメージで魔力を送ってみて」
そういうとじわっと右前足が熱くなる。そして、ご主人様の体内から魔力が注ぎ込まれるのを感じる。
『はい! 右前足が熱くなってきました!』
「よし、じゃあ次はそれを左手に回してこっちに流して!」
今度は左前足に意識を集中して魔力を循環させる。そしてさっきと逆に魔力をご主人様に戻す。
『はい、出来ました』
「うん、完璧だ。この感覚が全身に魔力を満たした状態だ。これを自分で出来るようになればミヤコはいつでも変身魔法が使えるよ」
あ、でも……
『あの……変身するって言われても誰に変身すればいいんですか?』
「ああ、それは心配ない。よく知っている相手になら変身できる。もちろんじっくり観察していないと不自然な箇所や違う部位が出るから他人に成りすますのは難しいけど」
だったら自分自身、元の世界の庭月野美弥呼をイメージして変身してみよう。呪文の言葉は自然と頭の中に浮かんできた。
『メタモルフォーゼ! 庭月野美弥呼になれ~』
なんとなく魔法少女みたいな口調になっちゃった。猫だから言葉は喋れないし、頭で考えてるだけだからご主人様にしか聞かれてないけど……
その瞬間、私の体は眩しい光に包まれる。光が弱まった時には私は庭にいた。
「やった! できた!」
人間の声が出るし、猫視点から人間の視点まで身長が伸びている。人に変身できたことに感動する。手の平も肉球じゃなくて手の平だし! 嬉しくてギュッと握ったりパーにしたりする。
「ミ、ミヤコ……」
あ、ご主人様! 変身できましたよ! ご主人様の声に反応して顔を見る。
ご主人様が真っ赤になって明後日の方向を見てるんだけど……どうして……下を見ると私はすっぽんぽんだった。
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