第7話 魔力測定と初めての魔法(チート)

「おはよう、ミヤコ」


 今日も腕の中起床である。猫としては幸せ、私としては眼福。

 ご主人様も満足だから三方一両徳というのはどうだろう。


『あ、おはようございます。グレイン様』


「今日はいろいろと実験させて貰うから。しっかり朝ご飯を食べておいてくれよ」


『分かりました。いろいろと聞くかもしれないですけどよろしくお願いします』


 二人(一人と一匹?)でベッドを出るとマリアさんのご飯を食べる。今日の私のご飯はミルクのかかったカリカリ。

 こっちの世界のミルクは猫には大丈夫なんだろうか?


 …

 ……

 ………


「とりあえずミヤコの魔法が使えるかの実験から始めよう。ミヤコ、この水晶玉に魔力を込めてみてくれ」


 研究室の中に連れ込まれて机の上に水晶球を置かれる。

 大きさとしてはバレーボールくらいありそうなでっかい水晶球。


 おおッ! この水晶ってゲームスタート時点でヒロインが魔力測定するやつだ! 異世界転生モノ定番アイテム!!


『は、はい!』


 私は水晶玉に座って肉球をかざす。ピトッと触れると水晶球の表面はひんやり冷たい。

 すると水晶玉は輝き始める。


「おお! これは!」


 あ、あれ? なんでだろう? ゲームではヒロインと攻略キャラ以外はほんのり明るくなるくらいなのに輝いちゃってる!?


『あの、これってマリョク多いんですか?』


「ああ! 普通の猫の使い魔だと魔力10もないはずなのに魔力が1000を超えているぞ!」


『え? 魔力1000? チート来ちゃった?』


 もしかして……


『あのグレイン様、グレイン様の魔力ってざっくりでどのくらいですか?』


「最近は計っていない。というか魔塔にある測定水晶でも10000が限界だから水晶が砕ける」


『グレイン様と私ってパスが繋がっているんでしたよね?』


 パス=魔力回路っていうのはこの世界では小さな魔方陣をペアリングして埋め込むことにより、供給側の魔力を受給側に送ることができる。


 例えばマリアさんは魔方陣を二つ持っていて一つは魔塔の魔晶石から魔力供給を、もう一つはご主人様が持つ指輪から受けることができる。


 これにより世界中のどこにいても魔力が供給される限り動くことができる。

 遠隔でも共有できるところが元の世界の電気と違う所だ。


「ああ、繋がっているけどそれがどうしたんだ?」


『どうもご主人様のパスからミャーコの体に直接魔力が流れ来れているみたいです。ご主人様に分からないのはご主人様自身の魔力だから分からないのでは?』


「なるほど。ミヤコにも魔力の流れ自体が見えてるわけじゃないんだな」


『はい。残念ながら』


 そうか、とご主人様が考え込む。そして、閃いたという顔をする。


「ちょっと実験したいことがあるから待ってて」


 ***


 ***


 今ご主人様に立っているのは魔塔の地下にある魔法訓練所。

 ここは防壁魔法ががかけてあり、魔法をぶちかましても標的を壊した以上の魔力は魔塔に吸収されてかき消される。


 ここで若手に訓練させれば魔法の練習に加えて、魔塔への魔力供給になるという一石二鳥の訓練所だ。

 欠点は訓練している人にとっては魔力を吸われまくるので疲労が半端ないこと。


『あの、グレイン様? これは一体……』


「ミヤコの魔力でこの標的をぶち抜いてくれ」


 あ、なるほど。実際に魔法を使うことによって私の魔力とご主人様の魔力がどういう関係にあるのか見てみようてことか。


 でも、それならもうちょっと私がどんな魔法が使えるか確認しなくていいの?


『やってみますけど……』


 私は10メートル先にあるある金属鎧に向かって肉球をかざす。


「魔法の言葉は何でもいい。ミヤコの魔力があれば大抵の魔法は発動する」


 ご主人様に言われる。よし、自信もってやっちゃいますか。


『ファイアーボール!!』


 ド定番だけどとりあえずファイアーボール。ゲームでも基本攻撃魔法だったし!


 ドーーーーン!!!


 肉球から炎の玉が飛び出しぶち当たった瞬間、激しい音を立てて鎧がはじけ飛ぶ!

 こわっ! 中身が入っていたら絶対死んでるよ。よくこういう魔法試験で鎧にぶっ放してるけどこれって人を殺す練習だよね!?


 鎧は金属部分が黒焦げになってぶすぶす言っており、皮のつなぎ目の部分は全部燃え尽きて鎧の形を保ってない!!


『えっと……鎧が使い物にならなくなっちゃいましたけど……』


「なかなかの威力だな。これなら入学試験も余裕でパスできるだろう」


 あ、あれ? もしかして私ったらチートな猫? それに入学試験って?

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