第9話 順風満帆?
「よく、こいつらを一網打尽にできましたね?それも、たった二人で?」
「なに、たった二人だから油断したんだよ。しかも、一人は若い美人だしな。あいつの胸に注意が行き過ぎたのかもな。とにかく、こちらとしては、油断してくれて、助かったということだよ。神に感謝しないとな。」
野盗団の首をトロン市の冒険者ギルドに届出て、それが賞金首だと確認されたのだが、その数と彼らがかなりの懸賞金のかかった猛者であることから、窓口の係が、年配のおっさん、巨乳の若い美人ではないのだ、が怪訝そうなのが半分、賞賛が半分が言葉に出たが、ロレンツィオは軽く流した。
幸いことに、
「そういうこともあるでしょうな。」
と納得してくれた。
八割方を為替でもいいということで、報奨金の支払いは即全額して貰えた。すぐにロレンツィオはマリエッタが待つ、ギルドの集会室兼食堂のテーブルに向かった。
「あ、夫が帰ってきたから。ロレンツィオ!」
マリエッタが立ち上がって手を振る。彼女の周囲に男達が何人か、たむろしていた。その彼らがロレンツィオを睨む。
「亭主持ちか。ハイエルフが、人間とかよ。」
と一人が舌打ちして去ると、他の男達も、しかたがないと言う顔で行ってしまった。
彼が近づくと、彼女はこれ見よがしに彼に抱きついてきた。
「こうしないと、色々と煩いでしょう?男も女も。」
「そうだな。助かるよ。」
抱きしめ返しながら、いい感触だなと思うロレンツィオだった。とにかく食事だった。宿を取り合えず確保して、色々と冒険者ギルドで手続きしていたりして、時間があっという間に過ぎて、昼をとっくに過ぎてしまっていたからだ。それに体を洗いたかった。野盗との遭遇戦の後、魔獣に遭遇、これを倒して・・・と返り血を浴びてばかりで、湯屋にいきたいとマリエッタがしきりに言ったが、内心ではロレンツィオの方が行きたくてしかたがなかった。湯屋の場所も、既に聞いている。
食事と酒を注文する。
「鮮血の二人組じゃ・・・。おい、女を取り換えたのか?」
「ああ、あいつには振られたよ。」
食事をぱくついている二人に、初老の、しかし眼光鋭い、歴戦の者であることと魔力の大きさを感じる魔導士とも賢者ともつかない、ロープを羽織った男が、ビールの入ったジョッキをもちながらやってきて、声をかけた。ロレンツィオは顔見知りらしく、軽く返すと、
「まあ、言うのはなんだが、前のコンビの女は、美人ではあったが別れて正解だったと思うぞ。しかも、数段美人の・・・ハイエルフか?振られて得をしたな。」
初めはむくれたマリエッタだったが、直ぐに機嫌を直した。
「あんた・・・ハイエルフの剣聖、マリエッタか?お互いいい取引だったな。ロレンツィオも良品だぞ。鮮血の二つ名に恥じない奴じゃったからな。お前達2人が揃ったら、本当に鮮血の二人組だのう。怖い、怖い。敵にだけはまわしたくないな。」
半ば冗談、半ば本気で、鋭い眼光はよっていないようだった、笑った。
「私には、過ぎた評価ですよ。」
「ロレンツィオ。謙遜も過ぎると非礼よ。」
「しばらく、ここで留まるつもりかのう?まあ、あまり目立たないようにして、しっかり稼いで・・・おごってくれ、たまには。」
意味深に囁いて、自分のテーブルに帰っていった。
食事を終えた二人は、そのまま湯屋へ行った。どの都市にも、大なり小なりの公共の湯屋があるし、貴族や金持ちが作る湯屋もある。後者も、慈善という目的、それがそのまま自分にとってのステータス、支持につながるからである。貴族だって領民に支持される必要はあるし、サービスもしないとならないのである。そこには顕密な計算もある。都市の金持ちも同様だ。取り上げるだけで横暴なことをする領主、金持ちが長続きしないのは、因果応報、神の罰という以上に真実なのである。ただ、そういうところでも、多少とも高級な浴室は料金が高くなる、その下は無料か格安である、大風呂とかは、その本来の目的から。ロレンツィオとマリエッタのはいった個室風呂は、高級の一番下だから、目が飛び出る程ではないが、そこそこの料金を取られる。
「その気にならないでよ。今夜ベッドの上で・・・ね。」
「わかっているさ。でも、その言葉そのまま返したいな。」
「いじわる。」
二人は互いに相手の体を洗いながら、笑いあった。初夜の翌日湯屋で体を洗い会ったが、同様に、そのまま旅立ったので、体をきれいにしてから、ベットの上でというのは、今回が初めてなのだ。
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