第8話 2人の旅の始まり
「え?」
こういう2人の旅立ちの始まりに出て来る、定番の野盗の一団。特に、一人は若い美人のエルフの女である。狙わないではおくことができない。捕らえて奴隷に売れば、超高値で売れることは確実であり、連れは頼りなさそうな男が一人だけである。
マリエッタにとっては、逃げるという選択肢はありえなかった。すかさず戦闘モードになり、攻撃魔法を、風によるかまいたちそして火球。まずは先制攻撃、彼らの出鼻を挫く・・・はずだった。が、彼らの半数以上、10人が彼女の攻撃に巻き込まれて倒れてしまった。
「?」
威力倍増以上と思っていたマリエッタだったが、その威力の大きさに驚いてしまった。
「何くそ!」
「頼むぜ。烈火龍の兄貴。」
巨体の男がでかい石鎚を振り上げて迫ってきた。軽く避けられそうだった。余裕をもって、剣を構えた。が、彼の体が何かに弾かれ、一歩下がってその何かに向って振り下ろした、渾身の力で、石鎚が弾き返されて、その男がひっくり返ったしまった。
「?」
自分で張った防御結界の意外なほどの効果に、かえって首を捻っているロレンツィオ。
それでも、すぐに我に戻った二人はすぐに、動揺して、我を忘れて、混乱している野盗の残りに向って斬り込んだ。
「風よ、我の盾になり、火と氷は我が剣と槍になれ。」
彼らにも魔導士がいたし、聖剣あるいは魔剣を持つ者も、魔法石の指輪を持つ者もいたが、彼らの魔法はマリエッタの詠唱による魔法に弾かれ、彼女の魔法攻撃を防ぐことができなかった。
「うわー。」
「きゃー。」
浴び絶叫の合唱。 すかさず水平に動いた彼女の剣は、大盾を切り裂き、その後ろの男はその斬撃で鎧ごと真っ二つになった。
「このあばずれエルフ!」
と大剣を振りかざして迫ったオーガのハーフらしき大柄の女は、その大剣ごとロレンツィオの剣の一閃で真っ二つになって、上半身が地面に落ち、血が噴き出すまで時間がかかった。それに驚いて逃げようと、背を向けた二人に彼の手裏剣が突き刺さった。
「逃げろー。」
と一人後方に残り駆けだした男は、マリエッタの矢が突き刺さって倒れた。
「3倍?4倍?・・・しかも、俺まで力が増している?」
野盗全員を倒して、返り血を浴びたまま、賞金首で賞金を得るために首を斬り、魔法収納袋に入れ、彼らの身に着けている武具や金、装身具、衣服をはぎ取って、さらに少し離れたところに置いてある食糧などを見つけ、やはりそれを収納袋に放り込んでいく。それも一通り終わって、改めてロレンツィオが疑問を口にした。
「やっぱり・・・私達が愛し合って・・・その・・・中に・・・相性の良さが強くなったということかしら?」
もじもじ恥ずかしそうに自分の意見言うマリエッタは、まるで恥じらう新妻の顔だった。初めて見る顔だな、と思った、ロレンツィオは。前世での記憶である。愛し合い、結ばれる前のなれそめという段がなかったことも思い出した、いくつもの彼女との前世では。彼女の前世は、この世界では一つなのであるが。
「ほ、本当にあなたが初めてなのよ、信じて。」
あの夜、彼女は初めての印がないことに、必死の表情で訴えた。
「冒険者をやっていたら、飛んで跳ねて斬って・・・でそれがなくなることが多いらしいよ。わかっているさ。それに、初めてのマリエッタが好きなんじゃない。マリエッタを愛しているのだから。」
「もう~。この女ったらし。」
と二人は二度目に突入してしまった。
「お互いフィードバックしながら強まっていくかな?」
「私達って、最高のコンビというわけね。」
「そうだな。いいんじゃないか?」
マリエッタは、その言葉を聞いてから、少し怖い顔になって、
「私が最初で最後ですからね、いい?あの女のことは忘れてよ。もう、あの男の物になったんだから。」
ロレンツィオは、一瞬目を閉じた。すぐに目を開けると、
「そのために…マリエッタと愛し合うために、恋人になり結ばれるために転生したんだ。後は、マリエッタが俺を離さないようにしてくれ。」
「ロレンツィオ…。狡いわ…。」
彼女は、彼の胸に額をつけた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます