第10話 用心をしていたのだけれど

 依頼を受けた仕事は終わったが、ロレンツィオはすぐに戻らない方がいい、もう少し時間がかかったように思わせるように、一泊夜営でもしてから帰ろうと提案した。マリエッタは、早く湯屋で体を洗いたかったので、

「?」

という顔だった。 

 ロレンツィオは、あまり速く仕事を終わらせ過ぎると、自分達の力が分かってしまう、そうすると恨みを買いかねない、だから、時間がかかり、苦労したように見せた方がいい、と説明した。うける仕事も高額で自分達の力でこなせると判断しても、普通は二人だけのチームでは絶対不可能だと思われるものは、無視してきた。高額の依頼を二人だけのチームで受けて、それを得ることが続いたらギルド全体から憎まれかねないからだ。今回のゴブリンの一団、各地を襲撃している、の討伐は、それ故にかなり躊躇したのだが、受けるチームがなく、親しくなっていた農民達から泣きつかれて、被害がかなりでていることもあり、引き受けた経緯がある。やるだけやってみる、と言っておいた、念のため、さも自信がないというようにみせかけるために。

 百匹近くのゴブリンを、掃蕩するのに、二人で1日で完了してしまった。


「そうね。私達が愛し合って、三倍以上パワーアップしているのが分かると色々、面倒だしね。」

とあっさり同意してくれた。”こいつは、理解がいつも早かった…助かるよ。“

「とりあえず、周囲に危ない連中はいないわね。」

“こいつは、納得すると行動も早いし、的確だったな。”

「もう、ここを出た方がいいかも?潮時かも?」

「そうだな。もう少し…と思っていたが…それがいいかもしれないな。」

 彼がチームを追放され、彼女が彼を追って離脱したことで、もとのチームが、自分を制裁しに来るかもしれないと思ったロレンツィオの危惧は、あの時は杞憂ではあった。しかし、今回はそうはいかないかもしれない、マリエッタの考えに従うべきかもしれないと思う、ロレンツィオだった。


 事前偵察の段階で遭遇したゴブリンの1隊を、まずマリエッタの雷電玉で半壊、本当はまずはある程度戦力を削る、混乱させるのつもりだったのが、威力が、ありすぎた、斬り込む彼女のために、陽動、後方との遮断、援軍の有無の監視、彼女の援護をロレンツオがしたのだが、彼の陽動が、何匹ものゴブリンを倒してしまったし、援護にとどまらず、殺してしまった。

「把握できてないな、自分の力が。」


 一部隊が帰らないことで来た1隊も一部を残し瞬殺し、逃げた、わざと逃がした、連中の後を追い、ゴブリンの巣と状況を偵察し終えた。

 翌日、2人はゴブリン達が大挙して彼らの巣から出て来るところに襲い掛かった。見張りを、当然配していたのだが、2人という少人数を見つけることができなかった。不可知魔法を使っていたせいもあるが、2人だからこそ使えもした。その見張り達も、本人達が気が付く前に二人に瞬殺されていた。

 奇襲と威力のある雷球の炸裂と連射される矢で、次々にゴブリン達が倒れていく。混乱する中に二人は斬り込む。魔法攻撃しながら、剣を振るうマリエッタを、ロレンツィオはは援護しながら、自分も次々にゴブリンを倒してゆく。石鎚をふるうでかいゴブリンをマリエッタは投げ飛ばした。ロレンツィオの蹴りで、ゴブリンの一匹が何匹も巻き込んで飛ばされ、岩に、木に叩きつけられた。巣の出入り口に逃げ惑うゴブリン達が壁にぶつかったようになって中に入れなくなっていた。さらに動揺するゴブリンに特大の火球を放った、マリエッタは。これで、彼らを討伐しようとするゴブリン達は全滅した。


 そして、二人はゴブリンの巣の中に入った。いたるところから、ゴブリン達は湧き出てくるように襲い掛かった来たし、罠もいくつもあった。二人は互いを背にしながら闘った。そして、最後の一匹を殺した。力も、体力も、魔力も、まだまだ余裕を感じるほどだった。


返り血は、近くの川で注ぎ、一日夜営した。もちろん、口付けだけで、帰って湯と石鹸で体を洗ってからと言いながら、2人は体を離すことができず、寝袋の中で抱き合って、激しく動くことになった。


 そして、ロレンツィオは一日程度では大したことにはならず、また、今回の仕事を受けたことの考えが甘すぎたことを思い知らされることになった。 依頼した農民達に報告すると、半信半疑だったが、ゴブリン達の切り落とした鼻を証拠として見せると、歓喜の涙を流さんばかりに喜んでくれた、男も女も、大人も子供も。

 マリエッタは、それで十分だと思った。彼女の思いは表情に現れたから、彼女の美しさは相まって、森の精霊、ハイエルフはまさにそれだと皆の目には映った。

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