第5話 追放ですか?
それから数日後のことだった。
「ロレンツィオ。お前のような軟弱な詐欺師野郎は追放だ、とっとと出て行け!」
チームに加入する新しいメンバーの紹介ということで呼び出され、チームのメンバー全員が冒険者ギルドの一室、チームの会合目的で借りたのである、の中にあるテーブルに着いた途端のリーダーからの宣告だった。
ロレンツィオは、そしてマリエッタをはじめ他のメンバーも、元々彼とチームを組んでいた聖槍使いの女が、ロレンツィオの隣の席ではなく、リーダーの右側に座っているのを見て、何となくこの展開を予想していた。
ここ最近の彼女が、彼の借りている、冒険者がよく利用する、長期滞在で、安宿の部屋に来なくなったし、彼女はより高級な宿を借りていた、特に、全くチームとは関係ない仕事に彼と行動することがなくなった、それまではマリエッタに対抗するように、たまには参加したのだが、ことから予想の範囲内だとも思った。
「お前より、俺の方がずっといいんだとよ。諦めな、男の魅力ってのが違うんだよ。それに、彼女はお前と違って、チームに貢献してくれているからな。」
最後は、皆の視線を気にしてか、付け加えた感じだった。
ロレンツィオは、思わずため息が出たが、“これはどういう意味だろうな?”、気持ちが分からなかった。彼女と抱き合った感触の記憶は鮮明だった。臭いがきつい女だったが、悪くはなかった、いや、良かった。だから、少しは残念には思っている。ソロで活動している彼と、他の冒険者と共に一時のパーティーを組んでの彼の仕事ぶりを見て、その後も離れようとせず、成り行きに二人のパーティーを組み、関係を結んでしまった、彼女が夜ばいしてきたのだ。そのまま一緒にいたのは、商売女とかが寄って来なくなるので助かるということもあったからだ。リーダーはというと、剣士の実力はかなりあるが、それ以上に30代の経験、統率力、とまで言えるかどうか疑問だが、があり、かつ、更にはそれ以上に上昇志向が強い男である。ギラギラとする、肌もそうだが、雄としての臭いが、強いことは確かだった。彼女は、ロレンツィオの力に頼ることで上を目指せると思ったが、彼の欲のなさに我慢できなくなったのだろう。彼を挟んで、先輩?愛人がいるのを知っていても。“それとも俺は、ホッとしているのか?”と戸惑いもあった。
「何しているんだ。早く出て行け。新しいメンバーが待っているんだからよ。」
「頼まれて入って、追放というのは…まあ、分かったよ。だけど、その前に、前回、前々回の仕事の報酬の残りをまだ、もらっていないんだが、払ってもらえないか?」
無理だとは分かっていたが、一応は悔しいから言っただけだった。
「お前の迷惑料として、お前に今までやった報酬を返してもらおうか?それが嫌なら、とっとと出て行け!俺の忍耐にも限度があるぞ!」
と怒鳴った、リーダーは。こうなると、他のメンバーは、クスクスと笑いを堪える者ばかりだった、一人を除くと。
「ああ、分かったよ。言いたいことはあるが…。じゃあ、さようなら。元気でな。」
ロレンツィオから、借金を返せと言われずにホッとしたメンバーが何人かいた。マリエッタはと言うと、無表情で黙っていた。
その視線が、数日前まで自分の恋人、婚約者だと称していた女が、先輩格愛人と競うようにしてチームのリーダーに体を擦り付けている姿に全く未練も感じる風でもなく、淡々と、粛々と出ていくロレンツィオの背に向けられた時、心の箍が音を立てて外れるのをマリエッタは感じた。
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