第41話 活人剣は剣にあるのではない
「な、何故、俺の活人剣が破れたのだ?神は、選択を誤ったのか?」
そのうめき声に、
「ふん。剣の技術のことを言っているなら、人の命を助ける剣とかいう活人剣などはないさ。その剣を持つ者の心のありようだ。振るう者の心で、同じ剣が、技が活人剣にも殺人剣にもなる。貴様のような大義もない、悪党で、悪党達と共に生きている奴には、活人剣など使えるものか。そんなお前が振るう剣が活人剣になぞになるものか。」
とケンセキは、魔力を纏った剣を突き刺し、今度は、彼に助けを求める女を、ゆっくり切りきざんだ、見せつけて。
「こっちは終わったわよ。」
「そうか。じゃあ、この勇者様にもとどめを刺すか?」
「私にもさせてよ。」
「じゃあ、一緒にやるか?」
「き、きさまら…罪のない…関係ない者まで…みんなが許さない…いつか…。」
「何を言っている?貴様の徒党ではない奴ら、4人か?、は気を失っているだけだ。殺しはしない。俺達は、貴様等とは違うからな。あ、あと、そのみんなとやらは、町ごと皆殺しにするから、心配するな。地獄で楽しみに待っていろ。」
「そうね。関係者だもんね。どうせ、世界のダニ、略奪者、強盗、人殺しの連中だからね。皆、喜んで、清々するわね。」
「き…、ぐわっ!」
2本の剣が目を貫き、脳を貫通して、頭蓋骨の中身が焼かれて、灰になった。
「それは、あいつが人殺しだったからよ!」
槍で突き刺されて、身動きができない状態で、かつ聖槍から絶え間なく高熱の電撃が体中を貫かれ、回復力が追いつかず、身動きができる体力が回復しないながらも、必死に抗議?をしていた。
「あの方は、王位に就けないからとやけになってなんかいなかった。それでも自暴自棄をおこさずに、文武の修業を怠らなかった。あの人は殺人の現場に行っただけ、あなたの魔法にあやつられて。私は見たのよ、あなたがやったのを、返り血を浴びたあんたをね。その罪を着せて、正義の味方の顔をして、あの方を殺したのよ。」
とソウは涙を流しながら罵った。
「あ、あれは、仕事をしただけよ。」
「そんな奴が、勇者様を名乗るな!」
「だ、誰か、私を助けて…。」
「誰もいないわよ。あんたを利用しようとした、革命軍という名の盗賊団は、皆切りきざみ終えたわ!」
コウが、泣いて許しを乞う、彼女の祖父達を殺した女を冷酷に切り刻んで、なぶり殺しにして、笑っていた。エルフが、これほど残忍な顔をするのかという笑顔だった。
「じゃあ、助けてやる奴らを回復してやるか。」
とケンセキが言った。
助ける者達の中には勇者が一人いた、勇者スキマだった。彼は、回復魔法で何とか動けるようになった時、この後しばらくは療養をしなければならなかったが、誰よりも短かったものの、何か夢から覚めたような、すっきりしてはいた、というよりすっきりしすぎている自分の心の中に、かえって戸惑っていた。彼は、
「今まで何をしていたのだろうか?」
と口にしてから、"いや、自分はちゃんと自分だったはずなのに。"と思い、なのに自分の言葉通りの気がして、ますます頭が混乱してしまった。
「勇者様は・・・あの女達に操られていたんです。」
「俺達も同様なんだけど・・・なんだか、その間がひどくぼんやりしていて・・・。」
殺されなかった彼のチームの面々が語り始めた。
「あの糞女が考えそうなことね。でも・・・あの女だけで・・・そんな大それたことのできるような女でもないし・・・彼女の後ろの・・・あそこも役不足だし・・・もっと・・・黒幕?」
ニワだった。彼女も首を捻っていた、本当に。聖女ナミは、自分の道具としようとしていた、道具と見ていた。そして、道具化していると確信していた。そう感じていた。勇者を利用しようとしていたことは確かだが、理由がわからなかった。魔王を倒せば、一応勇者の役割を終える。その勇者を自分のものとしても、そうするだけの積極的な理由はない。
「こいつらは、手を組んでいたようだけどね。」
ソウだった。勇者ハチノスナは、ソウが憎悪した「革命軍」と手を組んでいた。いや、その中に入っていた。
「こっちは8割方が勇者の徒党というところだったわね。」
ソウラが、ケンセキに同意を求めた。ケンセキが頷いて同意して、
「何か、たくらみをしていたな。それが繋がっているような気もする。」
どちらにしろ、彼らが大きな陰謀をたくらむ中にいたことは確かだった。
その戦いの一部始終を見、聞いてもいた、勇者達を連れてきた諸王や各教会の代表者達もそれを理解し、青ざめた。そそくさに報告のために、勇者ハジョワとそのチームの護衛の下に、もと来た道を帰ることになった。スキマとサバの両勇者は、ケンセキの下に残り、彼に従うことを選んだのだ。
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