第42話 力に溺れた者達の末路は?

「これからどうなるのかしら、私達?」

「これから大変なことになるかもしれないな。」

 ケンセキは、ソウラを抱きしめ、その大振りな乳房の感覚を味わいながら、ため息をつくように言った。

「私を愛している?」

「愛しているよ。」

 彼女の肩越しに、ぐったりとして、まだ快感の余韻を味わっている4人の姿をチラッと見て、彼女が一番しっくりいくように感じていた。"目的が、身の上が、一番近いと思えるようになったからかな。"彼女の体重の感触を太ももに感じ、彼女の体温がひどく熱いようにも思い、抱きしめている感触も、一体になろうとしあっているように感じられてならなかった。

「お前こそ、俺を愛しているか?」

「当たり前でしょう。」

 彼女も、自分の胸に感じる彼の体の感触、抱きしめ合って伝わる体温、脈拍すらも心地よく感じてならなくなっていた。

「もうどうなってもいい。これが副作用でも、力に溺れた結果でも、このままどうなってもかまわない。」

「ああ、このまま行こう。」

 彼は、彼女の唇に自分の唇を重ねた。快感の残り火を消そうとするように、嘗めあうように舌を絡ませあった。

"このまま、行くところまで、行くしかないな。"ケンセキは、これから起こるだろうことを予想しながらも、彼女との一体感、2人が一体になろうとするかの一体感を彼女とともに楽しんでいた。

 

 それに、彼と彼女らは、より強くならなければならなかった。その状態をより長く持続できるようにしなければならなかった。そういう強迫観念に追われていた。帰国していった貴族、司祭達も次第に表情が硬くなっていた、城を出るまで、準備している間にも。同行する勇者も、残った勇者2人もそうだった。勇者を利用しようとする陰謀というか、組織、得たいのしれない組織が存在する、それが動き出すかもしれない、革命軍も、ワタ清貧修道会も、仕事人ギルド(暗殺ギルド)、自由都市カサバリ(犯罪都市カサバリ)がつながっている・・・と思えるようになったからだ。そのことに、恐怖を、不安を感じたからだった。

 下っ端らしかったが、リュウが直接つながっていたらしい。それがわかった時には虫の息だったから、慌てて回復、治癒魔法をかけて、それから再度、いっそ殺してくれと懇願するまで拷問をかけて知っていることを洗いざらい吐かせた。それが一連の流れを感じさせることになったのだ。革命軍という名の略奪団が、おとなしくなり、各国の傭兵的な存在となっていたことも含めて、合点がいく存在が思いついた、確信はないものの。


「リュウの話だと・・・まあ信じると・・・大変な相手らしいな。」

 ナミの不愉快そうな表情を見て、慌てて言葉を継ぎ足したケンセキだったが、その表情は怯えてはいなかった。


「それなら、あたいは足手まといだから、いらないよね?だから・・・。」

「石礫位にはなりそうだから解放なんてしてやるわけないだろう?」

「そんな・・・随分貢献したよね?命を助けてくれた恩はチャラになっているよね?だから、奴隷から解放してよ。」

と執拗に言い立てていたのは、猫耳風獣人の一見少女風女だった。ケンセキが、最初のチームを追放されてしばらく一人で仕事をしていた時に、自分のチームに勧誘して、チームの全員とともに彼から散々ぼった喰ったあげく追放した女である、追放を決めたのはそのチームのリーダーだが、彼女は共犯である。彼の暗殺を依頼された彼女のチームは返り討ちで全滅、彼女は奴隷とされたのである。そして、今に至っていた。


「今までの待遇は、普通の冒険者より上だったわよ。ある意味ね、債務は増える一方よ。それにあんたはさ、私達の秘密を売って儲けようとでも思っているんでしょう?」

 いつの間にか側にきていたニワが耳元で囁いた。

「でも、私が彼に頼んで、奴隷から解放してあげてもいいわよ。」

「え?本当?」

 一瞬も顔を輝かせたが、

「嘘は言わないわよ。死体になってだけれどね。」

と耳元で囁かれると下半身の下着が生暖かくなってしまった。

「まあ、絶対そう思っているはずだからな。奴隷のままでいろ。これからは、もう少し役にたて。床は掃除しておけよ。」

と突き放してケンセキはニワと立ち去った。彼女は、そのまま床に崩れるようにぺたりと座り込んだ。 

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