第28話 まずは魔王軍を返り討ち

「やっぱり、コウの方がいいんだろう?彼女、エルフだものね。肌も、あんなにきれいだし、柔らかいし。」

"初めて会った時も2人でいた、ずっとつるんで来たくせに、嫉妬しあうのは激しいのはどうしてかな?"と思いながら、可笑しくもなりながら、ケンセキは彼女を後ろから抱きかかえるようにして、巧みに彼女の、巨乳ではない、大振りな乳房を揉みながら、腰を突き上げるように動いていた。二人とも、城塞の櫓の中の小さな部屋の中で全裸で動いていた。

「わ、私の方がいいの?」

「お前が一番だよ。」

「も、もう・・・この嘘つき。」

 ぶつかりながら一体に溶け合っていくような彼女の体は、ぶつかり合いながら溶けて自分のからだになるようなコウの感触と同じように、美味だった。みんなに、最高だ、一番いいよ、というケンセキは、その時はそれが本当だと思っている、と弁解していた、心の中では。

 彼女の喘ぎ声が止り、体が痙攣して動かなくなってから、

「う。」

と呻いて彼の動きが止まった。

 唇を求めあって、貪欲に吸いあった二人だったが、唇を離すと、

「来たわね。」

「ああ、そうだな。分かるか?」

「これでも正騎士の出よ。あなたもわかる?」

「もちろんだ。おれも、一応正騎士の出だしな。」

「二人とも、目的が同じようだし。」

「まあな。行くぞ。」

 二人は、互いの体臭が付いたままで、服を装備を身につけ始めた。


 城壁は、まだ修復が終わっていなかった。その壊れた箇所のかなりの部分は、ケンセキ達5人がやったことだった。

「誰かさんたちのお蔭で、籠城戦は無理ね。」

 その例外の一人、その時は、その攻撃を受ける側だった、が揶揄うように言った。

「野戦陣地は構築できた。それに籠りながらの野戦だ。お前のデビュー戦だな。」

「しっかりやって頂戴ね。」

「臭いがぷんぷんしているわね、2人とも。全く。」

「それで、あなたも強くなっているんだから、いいじゃない?」

「臭いをぷんぷんさせているのも、焼きもち焼いているのも、まずは戦って、あいつらを皆殺しにすることが先決よ。」

「分かっているわよ。」

 そこは、ハーモニックした。

「まずは、先鋒として、斬り込むぞ。俺が援護しながら進むから、お前達は正面をとにかく突破しろ。」

 ケンセキは5人に命じてから、振り返った。

「お前達は、とにかく身を守りながらついてこい。」

 そして、魔軍を方を見て、

「いくぞ!」

 それが号令だった。


トカゲ顔、もといドラゴン顔の魔軍の指揮官は、自信満々な顔を維持しながらも、

「な、なんだ・・・この騒ぎは?」

と左右に声をかけた。

「す、直ぐに左右の軍が・・・。」

「精鋭ぞろい・・・直ぐに・・・。」

と期待するように、声を左右から上がった。

先鋒の軍があっという間に押されて、潰走し始めていた。その後方の第一軍の左右の部隊が、すかさず横から襲い掛かろうと動き出した。指揮官は、迅速な対応をとったのだ、命令もなく。中央の部隊は守りの陣形を取っていた。

 突進するものは、横合いからの攻撃に脆い。その左右の攻撃を、より効率的にするために、相手の突進をまず中央の部隊は止めようとしたのだ。が、左右の部隊に魔法攻撃が降り注いだ。魔道士の防御結界も、魔大楯も全く効果がないかのように、次々に直撃しているのがわかった。

 その中で、時折矢が飛んできて、四人を貫き4、五人目に突き刺さる。その五人目が小隊長クラスの指揮官である。陸上ドラゴンが、突然血を吹き出して倒れ、周囲の魔族の兵を巻き込んでいく。それは本陣からは把握できなかったが。

 しかし、左右の部隊が崩れていく、そうこうしてる間に、中央の部隊が瞬く間に突き破られていくのはわかった。

「直ぐ第二軍を投入・・・。」

「いや、全軍投入だ。我が陣頭指揮をとる。」

 あれが、あの城塞を陥落させた存在か、と彼は心の中で舌うちをした。 


「魔王軍が全軍、動き出しました。」

 指揮官の脇に立つ、天性眼を使える魔導士の女が声をあげた。

"ここが勝負所ね。"指揮官、女である、は心の中でつぶやいた。

「ケンセキ殿達は、魔軍の先鋒を蹴散らし、第一軍も押し返して進んでいます。その勢いは、まさに破竹の勢い。」

 伝令がこの時とばかりに、なぜか彼女にはそう思えてならなかった。後続の2千人ほど歩騎の部隊が進んでいた、彼らの後を。

「魔王軍の別働隊が、左翼から進んできます。その数約2千。」

との伝令も来た。魔道士が、その直前にその動きを報告していた。

「予測通りだな。しかし、2千とは、甘く見られたわね。」

 指揮官の女は、見事な金髪をまとめて、兜をかぶりながら呟いた。とはいえ本隊の数は3千である。後方にも、予備の兵を置いているからである。さらに、奇襲の別動隊がいるかもしれないからだ。野戦陣地にこもっているとはいえ、精鋭の魔軍2千は、大敵である。守るので精いっぱい。その後ろ、突撃している2千が回頭して襲う、素早く魔軍の本陣を壊滅させる必要がある。その、困難なはずの最後が、今一番容易に起こるような状態だった。

「全く恐ろしい連中ですね。」

 傍らの魔導士の言葉に、彼女は頷くしかなかった。


 

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