第21話 俺達で魔王を倒そうか?

「全く、ニヤついてさ!」

「未練たっぷりな顔ね!」

「不潔よ!」

「全く、男は浮気者だね!」

 女達に責められながら、ケンセキは、カンロへの思いが、あの強い後悔の後、急速に萎み、ほとんど消えてしまっていることを感じていた。彼女らを、彼女らの裸体を見ていると、そばにいると、臭いをかいでいると、はるかに彼女らを上回る美人のカンロでさえ、はっきりとそれが認識できるのに、関心が遠のいているのだ。“これも、副作用かな?”そのケンセキは、自分の体を洗っていた。それは女達も変わらなかった。湯屋の半個室風呂に入っているのだ。個室としては下だが、湯屋では上の部類で、それだけに料金は高かった。市政府や都市の金持ち、領主は、公共の湯屋を市民や領民への福利のために私財を投じることは結構ある。彼らへの支持や彼ら自身のステータスのためでもある。また、市民や領民もそれを期待する。それのできない金持ちや領主は、評価が低い。そんなことはどうでもいいことかもしれないし、重要なことかもしれない。

 ただ、高級な半個室や個室風呂は料金を取る、ランクによりそれは高くなるのが普通だ。それも庶民の施設の維持に使われるので、使う人間に必ずしも非難はされない。


 そして、人に聞かれたくない、見せたくないものがある場合に使われることも多い。

 高額な仕事を次々こなしている彼らは使うことを半ば期待されているし、彼らの事情もそうだった。特に、今日はそうだった。ケンセキは、彼女らに提案したいことがあったからだ。


「これからのことだけど、魔王を倒しにでも行こうか、俺達は?」

 彼が浴槽に入り湯に浸かったのを見て、次々に入ってくる彼女らに向かって、彼は突然言い放った。

「は?」

 目が点の彼女達。とはいえ、冗談でも、考えなしの思いつきでもなかった、ケンセキとしては。


 困難な、難しいが、高収入な仕事を受けて、すべて短時間でクリアしてきた。ではあるが、応募のない、引き受けてがない、だれもが尻込みしている仕事を選んできた、他のチームから恨まれないように。だが、それもそろそろ…、潮時だと感じできたし、高収入な仕事は無くなってきた。もっと危ない場所、危ない仕事、アブナイ相手でなければならなくなった。金はもっと欲しいし、自分達の力はかなりアップしている。十分魔王退治の旅を始めても、それができそうだし、その過程で勇者並みにもなりそうだった。


 そのことを説明会してから、彼は、

「お前たちに取っても都合がいいだろう?」

 彼女らは、お互いの顔を見た。そして頷いた。

「それもいいわね。」

「乗ったわ、それに。」

「いいわ。」

「確かに、そのとおりね。」

 翌日には、旅立つことになった。


 そのはずが、彼らは最後だということでの仕事を受けて、その場所に向かうことになった。


「あの後、私に、また、ケンセキを彼女らから引き離してくれって頼んできたわ。彼女達が泣いて彼から逃げたい、自分のところに来たいと懇願してきたってさ。それで、あの四人は性悪女達だから、彼を守ってやると思って・・・とさ。私がちょっと優しくすれば騙されるし、彼のためだから、恨まれる筋合いはないってさ。断ったけど、あんたの方はどうなの?」

「俺の方には、彼を懲らしめるから加わってくれときたよ。もちろん断ったさ。懲らしめて彼女達から別れさせる、そして、彼女達が性悪女だと分からせるためだといってな。彼女達は、自分のチームに入れる、自分の直属に、のつもりらしい・・・。彼がいないと、彼女らは・・・わからないんだよな。」

「私が彼のこと犬以下にしか思っていないと決め込んで、話しは聞かないし・・・。私は割り込めないし、彼を私のものにできない・・・。協力しないれけど、彼を助けるわけにはいかないし・・・。ギルドの職員の知り合いに、それとなく言っておいたけど・・・。」

「どちらも元仲間だしな・・・。俺も、ギルドに伝えておいたよ。でも、お前はいいのか?ケンセキが死ぬことになるかもしれないぞ?

「私のものになってくれない・・・私を彼のものにしてくれないから・・・。それに、噂通りなら、心配ないんじゃない?」

「ああ、そうだな。」

 ゲイジとカンロは、ケンセキが出発した後、そんな会話をしていた。

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