第17話 一人欠けた

「ここで待っててよかったわ。」

 ケンセキ達3人の前に、ニワとソウが、座って待っていた。

 激しく、3人が愛し合った夜が明け、目覚めたケンセキたちは、彼が請け負った仕事の場所に行くため、彼の小屋を後にした。昨晩の激しい行為の疲れを残す事も無く。彼一人の仕事であるから、3人、しかもパワーアップしているからすれば、楽過ぎるものだったが、念のため下調べをして、夜営する場所を探していると、先回りしたようにニワ達がいた。

「こいつがウロウロしていたから、連れてきてやったのよ。」

とニワ。

「セキと一緒に行くんじゃなかったの?」

「彼女のことはいいの?」

 ソアラとコウが少し驚いたように尋ねた。二人つるんでいることが多い、チームに入った時も一緒だった、既に二人でチームを組んでいたからである、セキとソウだったため、自分達も同様なことを棚に上げてだが。

「だって・・・私は出ていきたいとか言っていないのに、彼女ったら・・・。私だって事情があるし、力は欲しいし、見返してやりたい、復讐したい奴らだっているんだもの・・・彼女ったら、私のいう事を全然聞いてくれないし、そういう娘じゃなかったのに・・・。一緒に連れてってよ、いえ、一緒に連れていってあげるわ、私の旅に。」

 彼女は自分の言葉に酔うように見えた。こいつの闇が一番深そうな、とケンセキは思った。一番主体性がなく、周囲を気にしてオロオロしていることが多い、ソウは4人の中で一番激しいもの言いだった。表情も、自分を鼓舞するような感じだったし、はっきりケンセキを利用すると宣言しているようなものだった。

"こいつは危険かもしれないな。"かといって切り捨てる、拒絶することはできなかった。そのオーラの黒さに、暗さに少し圧倒され、魅力を感じたことがフィードバックの悪循環で増幅され、互いの間に絆、そのような高尚なものではないが、決して、が生まれ、離れがたいものを感じていた。

「まあ、そういうわけで、血の誓をすませましょうか?あんたらは昨日すませたでしょう?彼を借りていくわね、行くわよ、ソウ。何、今頃迷っているのよ?」

とニワが言って立ち上がったのは、夜営の夕食が終わった後だった。

 ため息をつきながらもケンセキは、

「え~と・・・、もう恥ずかしく思う必要は・・・ああ、いいわよ・・・。」

とおろおろしたり、勝手に逆切れしているソウは、ニワに手を引かれてソアラとコウの前から姿を消した。


 二人は、違う。もちろん、ソアラとコウとも違うとも違う。叩きつけるようにぶつかってくるソアラとコウだが、ソアラは堅いものがぶつかって一体になろうとするかのようであり、コウは柔らかいものが融合するように一体になろうとするかのように愛し合うという違いがある。ニワは、手足を絡ませながら、上になりしたになる、ケンセキともども蛇のように絡み合うように愛し合うかんじだった。ソウはねそういう個性がなく、彼に弄ばれながら、激しく反応して愛し合うという感じだった。

 息を絶え絶えの二人を抱えたケンセキが、彼も生きが荒かった、戻ってきて、

「交代だ。寝てくれ。後は俺が起きている。」

と言ったのは、夜もかなり遅くなってからだった。


「勇者になるまでは、もうしばらくかかりそうだな。」


「彼氏と寄りを戻したんだ。良かったわね。少なくとも、私はそう思っているわよ。」

 魔樹、人や亜人を捕らえて食べる木がいつの間にか定着し、そいつは何と歩いて移動できるのである、の退治は彼ら5人が揃っていれば、瞬殺で終わる。すぐに旅にでるつもりだったし、一人でなら可能であるという判断での仕事であるから、5人の仕事であれば半日で終わっても不審に見られないだろうということもあって、今回はそのまま戻って、ギルドへの申請を行ったのである。ケンセキがソアラとコウを連れてギルドの窓口に、ソウが五人で借りていた部屋の明け渡しの手続きに行っていて、ニワは一人テーブルに座って茶を飲んでいると、聖女仲間が彼女の隣に座った、彼女の許しも得ずに。

「獣耳女が何か言っていたんじゃない?」

「ああ、・・・。少しばかり言いかけていたけどね・・・すぐに、あんたたちが出ていくと逃げるようにしていっちゃったわよ。う~ん、本当に怯えたような感じだったわね。あんた達、虐めたんじゃない?」

 いたずらっぽい表情で窺うように、ずいっと顔を近づけた。やや小柄で、かつ童顔で可愛い感じすらする、自分と同い年、もう30歳近くの聖女、"私より腹黒よね、多分こいつ。だから、頼りになるんだけどね。"

「かわいい動物を虐める趣味はないわよ。」

と馬鹿なこと言わないでよ、という表情で軽く返した。"彼女の副作用はこういう形ででたのかしら?"

「ああ、そうそう。彼氏さんとうまくやるために大変で、おだてないと何もやらないし、いつも手伝ってやらないと全てが上手くいかなくて、疲れ切って・・・とか言っていたわね。こんなにうまくいっているチームはないのにね。私は、あんた方が彼を捨てて出ていったら、彼氏さんを私のチームに勧誘しようと、力づくでもねと思っていたんだけどね~。」

「だめよ、あ、げ、な、い。でも、相性があるのよ。普通は、1~2割増し、良くても3割増し程度よ。私達は相性がいいからから特別なのよ。」

「二割増しでも、戦力は3乗だから倍になるわよ。それに、それなしでも、彼はいい買い物よ。それで、あんたらどのくらいなの?」

「今は、倍以上よ。」

「ほおー!」

 5人で堕ちるなら、堕ちるところまで堕ちることにした。だから、ある程度能力アップを公言することにしたのだ。戦うことになる相手も出てくるかもしれないからと、戦力は控えめということにはしたが。

「それからね、言っておくけど、彼も倍以上になっているからね。それも、相性のいい私達といるから・・・彼が言うにはね、フィードバックしているのよ。」

 意味ありげに、ニワは彼女の方に視線を向けた。

「えー、そんなの聞いたこともないわよ。」

「そうでしょう?彼も初めてらしいわよ。だからね、私達は離れられないのよ。互いに強くいたければね。」

「ふ~ん。わかったわ。一蓮托生、運命共同体というわけね。」

 彼女は、いつの間に注文したのか、ワインを口に含んでいた。ニワは、それを見て自分のワインをグイっと飲んだ。

「でもね、あなた、彼に復讐とか手伝わせるつもりじゃないでしょうね?」

「そんなつもりはないわよ。もし、勇者様くらいに強くなって、復讐できたからってそれで終わりでしょ?それで死んでしまうより、思いっきり楽しんでから死にたいわよ、それもできるだけ長くね。」

「はは・・、それがいいわよね。私も同感。はは・・・。」

 一通り笑ってから、彼女はニワに自分の杯をかざした。それに合わせて、自分の杯をニワは軽くぶつけた。

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