第15話 だから私達だけでやっていこう!

「ニワばだめだよ、もう狂っちゃっているから。それに、全然リーダーやれていなかったし、彼女のせいで、みんな出ていったんだから。このまま彼の魔法漬けになって、奴隷のようにハーレム要員になつてしまうなんて嫌じゃない?最悪よ。地獄よ。ちょっとばかり強くなったからって、彼を赦していいの?うまくいっている?私達が手伝ってやっているからよ。私達、彼無しにうまくやってきたじゃない、ずっと。こうなったのは、チームがこんなになったのも、みんな彼がチームに入ったせいじゃない?四人で、四人だけでやり直し、再出発、彼は出て行ってもらいましょう。そうすればねみんな帰ってきて、昔通り和気あいあいで、全てうまくやっていけるわ。」

「ちょっと…、私達、彼を追放して、それから戻ってもらったのよ。他のみんなが出て行ったのは、彼が追放されてからよ。」

 まくしたてるセキに、日頃口数の少ない、そして、チームに入る前から彼女と組んでいたソウがたまりかねたという感じで指摘した。

「そんなこと言ってないじゃない?大切なのは、私達の意思がなくなっちゃうってことよ!彼の性奴隷になってしまっていいの?私は嫌よ。自分が愛した人と結ばれたいの!あなた方もそうでしょう?」

 止まらないセキに呆れ、圧倒されたセキは、助けを求めるように、コウ達の方に視線を向けたが、彼女達は難しい顔で黙っているだけだった。ソウは、これ以上言うのを諦めた。それをみんなの同意と見たセキは、

「明日、あいつと一応聖女様にいってやりましょう、私達は出て行くってね!」

“彼女…おかしい…そりゃ…。”と勝ち誇るように宣言するセキに、自分の考えを決めかねているソウは、悩ましく思った。


 セキの勢いは翌日も変わらなかった。ギルドに借りた一室で、彼女はケンセキに前日と同様な調子でまくしたてたのだった。

「あんたが戻りたいというから、許してあげたけど、これ以上あなたの好き勝手は許さないわ。私達の方から、今度出て行ってあげるわ。分かったわね。」

とまで言った。もう知らない、我関せずというニワ、ソウラとコウはというと無表情で黙っていた。おろおろしながらソウが何とか言おうとしたが、

「言いたいことはいっぱいあるが、まあ、分かった。これ以上いっしょにいたらね後戻りできなくなるからな。これは、チームの基金としてとっておいた金だ。お前達で分ければいい。俺は、明日ここでの最後の仕事に出て、来週にはこの町を去る。それまでに、チームからの離脱届を出しておいてくれ。じゃあな、半年間、まあ、一番楽しかったよ、ありがとうな、礼を言うぜ。」

とドサッと金貨の入った袋をテーブルに投げ出したので、ソウは言いたい言葉を言えなくなった。ケンセキは、そのまま部屋を出た。


「おう、女達に見捨てられたか?」

「お前が上玉5人と、なんて最初からおかしかったんだよ。」

「うちのチームで拾ってあげようか?」

 ケンセキが張り出してあった仕事の依頼の紙の一つをはがすして、手続きをしていると後ろから揶揄いの声が聞こえてきた。彼は黙って書類にペンを走らすだけだった。

「彼女達、あんたなしでやっていけるのかい?」

 馴染みの、あくまでも、巨乳又は爆乳の若い美人のお姉さんではない、ギルドの事務職員は呆れたという顔で言って、彼の書いた書類を受け取った。

「彼女達は、あれでしっかりしているところはしっかりしているから。」

と苦笑いしてケンセキは、彼に背を向けた。

「身の程を知るんだな。」

「自業自得だぜ。」

と揶揄する声が続いたが、

「大丈夫か?」

「うちのチームに来ないか?」

「彼女達、出ていくって?あんまりじゃない?」

と同情してくれる声もあった。同情してくれる声には礼をしつつ、

「今晩は飲まないか?」

「付き合うわよ。」

という声もあった。

「明日。仕事があるから、その後でな。」

と断って、彼はギルドの建物を出た。

 満点の星と月、三日月だった、心の中と同じくらい冷たい風が吹いていた。

「また、一人で出直しか。まあ、最初からそうだった、あれは夢だったと思えばいいことだし・・・。」

 自分の言葉にひどい空々しさを感じてしまった。大きなため息をついた。それでも、別れるなら今しかないと思った。彼は、街はずれの掘っ立て小屋、彼の借りている家に向かった。 


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