第12話 愛は単なる副作用?2

 支援魔法使いは少ないこともあり、その詳細はあまり知られていないし、経験の蓄積も少ない。

「支援魔法使いということで、それなりのネットワークができているから、情報を集めたんだけど・・・。」

「私も、色々と聞いてみたわ。聖女の絆も馬鹿にできないのよ。でもね・・・。」

 わからなかった、というのが二人の結論だった。支援魔法で二倍以上になる、施術者にフィードバックする、愛情が芽生える、性行為の能力も互いにフィードバックしあうことである。ケンセキの予想外であったこと以上に、例がないらしいということだった。

「大体、私の好みはあなたのようなんじゃないし、私は尻軽女じゃないしね。」

「それは、俺のセリフだよ。」

 何故か、そこまで言って二人は噴き出した。


 二人は、仰向けになって、粗末な天井を見ながら、延々と語り合った。最後に、

「これからどうするの?」

「お前こそどうする?」

「男から言うものよ。」

「・・・。全てを忘れて、また、一人でやっていくか?」

「忘れてね・・・できるかしら?彼女達?私は・・・。」


「それで、あなた方はどうするの?」

 ニワは、彼女らが借りている部屋で、他の女達に尋ねた。その前に、ケンセキと話した結果を説明した。

 彼の支援魔法で自分達の力が飛躍的に伸びた、さらに伸びた力が体になじむのを待って、そのように思えるのだが、また伸びていく。相性の問題らしいが、これだけでも彼の想定外だったこと。その効果がフィードバックして彼の大きな力のアップとなり、それがさらに彼女達のパワーアップにつながる循環はさらに、彼の予想外、想定外だったこと。さらに、彼女らが自ら彼に抱かれに行ったのは、その結果の副作用ではないか、というのがケンセキとニワの見解であること。今なら、彼と袂を分かてば間に合うということ。


「別れたら、何が別れるの?私達の力がもとに戻る、何分の1にということはわかるけど。」

 ソウラが、少し目が虚ろになっていたが、尋ねた。他の3人もわからないという顔だった。

「私達はここ半年以上、自力をはるかに上回る力を使ってきたわ。世間の目も、私達を過大視して評価しているわ。力の快感を忘れられる?世間の私達の評価が忘れられる?力を失った日々が不安じゃない?それを知った世間の目が怖くない?今なら、力がなくなったことに耐えられる、日々を変えられる、世間の目の過大視も、まだ大きくないわ。」

 ニワの説明にソウラだけが、頷いた。

「だから、彼ってば、自分の、私達のパワーアップを隠そうとしていたんだ。」

 ソウラは納得したよ、と言う顔になり、目を閉じた。

「別れようよ、奴と。私達は魅了の魔法見たいなものをかけて私達を利用したんだよ、散々。体だって弄んだんだよ。そんな奴と一緒にいる必要はないよ。」

 セキが勢いよく立ち上がり、皆に訴えるように言った。

「あのねえ、さっきも言ったでしょ?彼にも予想外のことだったんだって。それに、彼に力をもらったんでしょ?その対価じゃない?」

 ニワが窘めるように言うと、セキはさらに、

「頼んで強くしてもらったんじゃないわよ、ないわよね。彼の支援魔法なしでも、私達だけで、私達本来の力だけでやれたじゃない?彼なんていらないんだよ。」

 ここ三回の仕事は彼無しで彼女達だけで仕事の依頼を受け、その前は彼はいたが支援魔法なしでやった。どれも、委託を無事こなしていた。


 オーガの盗賊団だった。何時まで、やっているのよ、と後方のニワは歯ぎしりした。ソウラ達は果敢に攻めている、優勢に見えるが攻め切れていない。彼女らの攻撃は、彼らをスピードで翻弄しているものの、その頑丈な体にダメージをなかなか与えられていない。

「くそ。まだ、倒れないの!」

 口を動かさないで、手を動かせ、足を動かせ、とニワは飛び込んできたオーガの1人に追いつめられかけていた。"私が何で戦うことになるのよ。"その時、ケンセキが駆け付けてきて、そのオーガに、電撃魔法を纏わせた剣で斬りつけた。叫び声わ上げて、そのオーガは倒れた。すかさず止めをさして、

「ごめん。大丈夫か?」

「遅いわよ。でも、助かったわ。」

 その言葉を聞いたかどうかわからないうちに、彼はコウの手助けに駆けだしていった。結局いつもの日数の3倍以上かけて、彼の八面六臂の活躍で仕事を全うできた。いつもより、ランクをかなり落としている。


 ケンセキなしでの仕事はさらに危うかった。さらに仕事のランクは落としていた。何日もかかり、へとへとになって動けなくなってしまった時に、残った魔獣にぎりぎりの状態で対峙していた時に、仕事は達成していたが動けなくなって別の魔獣が現れた時に、自分の受けた仕事を、時には2つ達成してから心配してやってきた彼に回復してもらい、抱えられたりして、残った魔獣や新たに魔獣を始末してもらって、帰りの道を彼に守ってもらいながら、色々と彼に持ってもらい、食事などを作ってもらったのである。


「とても、彼無しでやったなんて言えないわね。」

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