第11話 愛は単なる副作用?
「後でユックリ話したいことがあるの。あなたもじゃない?最近の仕事、ちょっと、あんたにしては無理を重ねていたけど、なにか考えが、あるのでしょう?」
ニワは衣服をゆっくりと脱ぎながら、自分の裸体をよく鑑賞なさいと言うように、実際、ケンセキは鑑賞するように見ていた、言った。
それは、彼がチーム全員と関係を持つようになってから、借りた一戸建て、古い小さな掘っ立て小屋の住まいの中だった。周囲の部屋から、夜女を連れ込んで煩くて、寝られないという苦情があって、安宿を退去することになったためだった。そうなることを見越して、物色し、見つけていたところだったので、即引っ越したのである。
「夜のいい声が聞こえなくて寂しいよ。」
「楽しみにしていたんだけど。」
と彼が出るとなると、隣人達はそんなことを言い出したが。大体、彼らも女を度々連れ込んでいたのだが。苦笑いして、彼はその宿を出たが。その新居は、彼の所持金からすると、“え~、もっといいのがいっぱいあるだろう?”だった。
ニワは、五人の中で一番年長で、唯一、ケンセキより年上だった。体はまだまだ崩れていないが、妖艶な色気が醸し出されている、もうそろそろ腐りかける直前より少しでも前の果実というところだった。ベットの端に座る彼に体を投げだしてきて、唇を重ねる。そこから、ねっとりした口づけが始まり、彼が彼女を下にする。長い口づけが終わると、互いに執拗な愛撫を加えあう。年齢と口ぶりほどは経験者ではないニワとケンセキはいい勝負だった。そして、組んずほぐれつが…。
小型のドラゴンの討伐だった。何とか、彼らなら大丈夫だろうとは思われたが、実力を隠すと言う彼の方針からすると、逸脱ではないか、とニワ達は思った。ただ、ぎりぎり超えかな?というところでもあり、報酬も破格であったから、引き受けることには反対はしなかった。事前の下調べ、現地での偵察、把握もいつも以上にした。ケンセキも、かなり心配はして、用心深くしていたのが分かった。
ドラゴンに遭遇した。依頼よりかなり大きいレッドドラゴンだった。
いつもの体勢、隊形だ。コウが一歩下がって、矢と魔法攻撃。ソウラやソウ、セキが陽動、攻撃を連係して加える。三歩ていど下がったニワが加護と聖結界を局地的に張る。ケンセキが、時には全員のサポーターをし、時には、戦いの先頭に立ち、さらには、囮を引き受ける。その間も支援魔法を五人全員にかけてるし、攻撃魔法も放つ。支援魔法は、既に、三倍以上になる効果が出るようになっていた。
「軽くドラゴンの皮が切り裂けた!」
「ぐわー!」
「槍がチーズに刺しているように…。」
「がー!」
「壊してる感触ー!」
「うー!」
「矢が刺さった、火球で大火事よー。」
「ぐぬぬ…。」
「私の結界のせいよね。」
ドラゴンはなにかにぶつかったように倒れた、大地に、大きな音と振動がその証拠だった。
素早い攻撃に傷つき、大きな魔法攻撃魔法の直撃を幾つも受けながら、渾身の火炎攻撃は弾かれ、そらされ、外された。焦るドラゴンに、3人の剣、聖槍、拳に魔力を込めた連続攻撃が浴びせられ、それにケンセキも加わっていた、倒れて唸るドラゴンに長い詠唱の末のコウの雷玉、これにケンセキの雷が加わった魔法攻撃で止めがさされた。その直前に放たれた火炎攻撃は、ニワの聖結界で阻まれた。
「早く、くたばりやがれー!」
5人の女全員の心の声がハーモニーした。
ドラゴンは倒した、仕事は果たした…はずだった。が、なんと、もう一匹、同じくらいの大きさのブラックドラゴンが現れたのだ。力がかなり消耗している彼女らは、だめだと思った。が、
「俺が何とかする。援護してくれ。」
とケンセキが飛び出した。
「馬鹿、何やってるの?」
ソウラ。
「無理よ!」
はコウ。
「とにかく、あんたがた援護しなさいよ。」
はニワ、彼女は自分達とケンセキに防御結界を張っていた。
おろおろしながら、皆に従うソウ。
「逃げようよ。」
とじりじり下がるセキ。
防御結界がドラゴンの攻撃から守り、雷玉と斬撃波がドラゴンの注意をそらした。遅れてきた、聖槍の衝撃にほんの少しだけ狼狽えた。
「全然効いていないよー!」
とソウが叫んだ時、ドラゴンが突然倒れた、地面に、大きな音と振動とともに。
「うおー!」
ケンセキが剣をドラゴンに突き刺し、渾身の力で電撃をドラゴンの体内に見舞った。
「グオー!」
「今だー!頼む!」
というケンセキの叫びに、ニワも含めて四人は呼応して、動けぬドラゴンに無情な攻撃を加えた。そして、何とか5人で止めを刺した。
二匹目のドラゴンがいるというのは不可抗力、依頼する側の不手際ではあったが、1匹目を倒した時に余力があれば…。ぎりぎりの仕事、普段は受けないことをしたせいだった、彼が。
廃墟に巣くう魔獣の一掃。最後は力尽きる寸前、ドラゴンの件のように、突然突入するケンセキ、何故か倒れる魔獣達…で依頼達成ができ、死者はでなかった…と同じだった。
「死にそう…。あんたって、本当に凄いわ。」
「お姉様が凄すぎだと思うよ。」
息を弾ませながら、並んで仰向けになっているのは同じだったが、
「ふん。二人でも同じじゃない?もしかして5人でも同じじゃない?」
ニワの言葉に、ケンセキは沈黙した。
「あなたも、考えていたようね?」
とニワが続けると、
「こうなるとは思ってもいなかったんだよ、俺も。」
「分かっているわよ。副作用かもということよね?」
「ああ。愛も副作用だな…。」
「う~ん。愛か…。まあ、そうしておこうか。」
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