第6話 じゃあ、仕事に行こうか?

 5人の女は、翌朝早く、冒険者ギルドの事務所に入ってきた。既にそこには、張り出されている仕事の張りだしを真剣な目で見ている連中も、食堂では朝食を取っている連中が、ちらほらといた。

 彼女らは、外套の下は露出たっぷりの、簡単に鎧とかを着てはいるものの、姿だった。

「いいわね。有無を言わさず、囲んで、胸を密着させて、耳元で"帰ってきて"と吐息を吹きかけて言うのよ。」

「分かっているわよ。」

「みんなでやるのよ。」

「一人だけ他人顔しないでよ。」

 4人が一斉に聖女を睨むように言った。

「もう、分かってるわよ。この胸を思う存分押し付けてあげるわよ。減るもんじゃないしね。」

 彼女が諦め顔で答えていた。

「あ、いたわ。」


 彼は、張り出されていた仕事の紙の一つをじっと見つめていた。彼女らが声をかける前に彼が気が付いた。彼女らの姿を上から下まで見てから、

「ああ、来たか。おはよう。準備はできているようだな。じゃあ、行こうか?」

と言って、見つめていた紙をとった。

「え?」

 五人はハーモニー。

「俺達6人に、ちょうどいい仕事があったんだ。この依頼を受けようと思うんだ。行くだろう?ああ、その前に俺の復帰の手続きをしようか?」

 彼は、ことさら当然のこととのような顔をして彼女らに言った。

「戻ってくれるの?」

「いけないかい?」

 彼の言葉に、涙目になった4人は、

「ありがとう。」

と彼に駆け寄り抱きついた。外套をパッと脱ぎはしなかったが。


「全く・・・。」

 出遅れた聖女は、つかつかと彼に歩み寄り、自分の唇を彼の唇に重ねた。

「お礼。まあ、タダだしね。」

 聖女はしれっとした顔で言った。嫌悪感、怖気がでるということはないけれど、別に彼に特別な感情は持っていないし、自分の好みのタイプではない、ギラギラとした男か、もちろんある程度イケメンでなければならないが、かかわいいという感じの男、両極端であるが、それが自分の好みなんだよ、ということは口にださなかった。争うなら、あんたらだけでやってよ、という顔だった。それが本心だった。

 4人の方はというと、彼女の方を見て困った表情になっていた。彼女らも、彼を嫌ってるわけではないけれども、自分が彼の恋人の座を狙いたいとは全く思ってなかったからだ。


「まあ、離してくれよ。やることやらないといけないだろう。」

 可笑しそうに彼が言うと、これ幸いに彼女達は彼から、少し照れながらも離れた。"ば~か。のぼせるんじゃないよ。"で心の声はハーモニーしていた。

 しかし、周囲では、

「ハーレムかよ?」

「ブスばかりじゃない。」

と好奇の視線を向けながら、ひそひそ声をだしていた。


 その視線を少し、痛いと感じる5人の女と特に感じていない風の男が一人。

 まずは、チームへの彼のチーム入会の手続きと仕事を受ける手続きをを、窓口で行った。

「この仕事・・・大丈夫かい?」

 少し年期の入った年齢の係の男が、女達を品定めするような表情で、少し心配そうに、少し疑わしいという風に尋ねた。彼女らは二、三日前に来て、昨日ここでの手続きをしたばかりなので、彼は彼女らのことを知らなかったのだ。知っていたら、

「危ないんじゃないか?」

と難色を示したところだった。

「昔からの馴染みでね、ランク以上の実力があるんだ。」

 ケンセキは、自信たっぷりで答えたので、

「まあ、あんたが言うなら大丈夫だろうな。」

 そういうと、依頼書を出してくれた。


「私、あんたの実力は知らないけど・・・、彼女らと私じゃ、ちょっとやばいと思うんだけど。まあ、私は後ろにいるから、いつでも逃げられるからいいけどね。」

とはニワ。かなり心配そうだった。"こいつ何考えているのよ?"

「5人だしね。」

「いや。」

「以前、彼女らは2割はアップしていたんだ。俺との相性がいいんだ。5人になったからね、あの4人なら4割はパワーアップしてくれるだろうから、大丈夫さ。」

やはり自身満々だった、彼は。ニワはしかたない、信じてあげるわという顔で、

「それなら大丈夫そうね。素なら危ないけど、4割増なら大丈夫ね。で、私も4割増?」

「さあねえ・・・やってみないと分からないから・・・最低でも2割弱は・・・。」

 ちょっと悪いな、という顔の彼に、少し疑いを持ちながらも、にっこり笑って、

「相性がよくなりたいとは思っていないしね・・・まあ、いいでしょう。」

"え~。相性がよかったの~?"ちょっと嫌よ、オーラを出してしまっていた4人。それに気が付いているケンセキでもあった。

 




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