第4話 それは最後の手段よ!

「それで、あんた達、食事と酒に目を奪われて、彼に色仕掛けで、4人がかりで胸や尻を、頬を摺り寄せて篭絡させて、戻ってきてもらうという作戦を忘れたっていうわけね?」

 聖女は食事をかきこみながら、時折、ワインを飲んで、ソウラ達を睨みながら文句を言った。その姿に、笑いがこみ上げるのを感じながらも、それは堪えていた。

「あいつらにやらせなくてよかったわね。あの時行かせてたら、絶対、彼、戻るもんか、ということになっていたわね。出ていってくれて助かったわ。」

と食べ終わって、ワインを飲みほしてから、満足そう、食欲を満足させてということである、な顔で、しみじみという調子で聖女は言った。黒髪で、まあまあスタイルもいい、美人だった。一応、清楚風に見える。

「まあ、座ってよ。ゆっくり、今後のことを考えましょう。」

 四人は黙って座った。当初、聖女ニワが言った通り、4人がかりで、乳房や尻を擦り付ける様に寄り添って、熱い吐息と囁きで、

「戻ってきて。」

「お、ね、が、い。」

「君が必要なの。」

「私達じゃ嫌?」

で簡単に堕ちると思っていたし、そのため、すぐにでも淫乱モードの装いになれるように、上下ともすぐ脱ぎやすいものを身に着けていたのである。彼は、結構美人には弱い、普通の男性並みには、と分かっていた、分かっているつもりだった。それがつい、食事と酒に目を奪われたのだが、

「商売女じゃないし・・・別に好きでもない男に・・・嫌いではないけど・・・。」

「やっぱり躊躇するよね。」

「まあ、やる気だったし、やれたはずだったけど。」

「やっぱりやっとけばよかった。」

 弁解がましく言い立てながら、最初の構想に戻る4人だった。

「とにかく彼に戻ってもらわないとダメなんでしょう?」


 ケンセキに戻ってもらおう、という考えは1年以上前からあった。ニワは、それは知らないが、再度、数か月前にぶり返した時のことは知っていた、覚えていた。

「戻ってきていいから、って言ってやるんだ。過去のことは赦してやる、水に流してやるからと言えばいいんだよ。あいつがごめんと頭を下げて、うん、わかったから赦してやる、これで奴も喜んで、大手を振って帰ってくるさ。おれが、一言がつんと言ってやるからさ。」

 ソウラ以下4人は真っ青になった。その数か月前のできごとと同じだったからだ。

 その時は、二番目の聖女が割って入った。

「それでは、その方はよほどひどいことをして追放され、今は酷く窮迫して、戻りたいと渇望しているように聞こえますね。そうでなければ、このようなことを言われたら、戻ってなんかやるものかと激怒しますよ。」

と厳しい顔で窘めた。

「じゃあ、俺が悪いって言うのかよ?俺に頭を下げろというのか?」

「彼には頭を下げさせても、ご自分は下げたくないというわけですか?」 

 後は静かにたたずむ聖女への暴言が続くことになり、しばらくして聖女はチームを去った。彼女に二人のメンバーがついて行ってしまった。この時は、聖女ニワが、

「そんなことを言われて、させられるようなひどいことをして追放されて、窮迫している男に来てもらいたくはないわね。」

と皮肉交じりに言ったものだ。その意味がわからず、

「まあ、だから赦して・・・。」

と言いかけた時、

「聖女様の言う通りです。あんな奴が戻ってくるなら私が出ていきます!」

と言い出したのが、チームの女性の最年少の女だった。ケンセキは、実は彼女の能力に期待して、高く評価していたのだが、愛想のない性格で、かつ彼の一番腹を立てる言い方と他のメンバーのことを引き合いにだして彼を批判したものだから、めったに怒らない彼を激怒させてしまった。ケンセキは、その後彼女に嫌がらせとはせず、以前のままの対応と高い評価をしたままだったが、彼女の方は極力彼を無視するようになった。出ていったリーダーや無茶して死んだ男に傾倒していたから、なおさらケンセキを嫌うようになった。彼女の発言で、その話は没になったが、もめごとは続き、一人、2人とチームを去った。

 ソウラ達がケンセキに戻ってもらおう、たまたま、彼の近況が分かったため、自分達が説得すると言い出した時、この彼女は、

「あいつが来るなら、私が出ていきます!」

と頑強に反対した。

「じゃあ、あんたが出て行ったら?」

とのニワの言葉に、彼女を擁護、以前ケンセキの復帰を言い出した男も含めて、する男達との間に言いあいの応酬があったすえ、3日後、

「あんたら、チームから追放よ。」

とニワが言い出した、ソウラ達とニワの5人を残して皆が出ていったのだ。何となく、その頃にはニワがリーダーのように振舞っていた、不満が持たれたものの、そうでしかチームをまとめられなかったからだ。

「このままで頑張る?」

とのニワの質問に、

「特に彼女が出ていかれるのは痛いわ。でも、ケンセキに帰ってきてもらう方がいいわ。少なくとも、私はそう思う。」

 かなり唸って、悩み、考え抜いたソウラの言葉に他の3人が頷いた結果だった。


「とにかく、明日。あの色ボケ作戦をやってみることね。それしかないわよ。」

「あんたも、お願いね。」

とのソウラに、ニワはいつもの余裕とふてぶてしさを失って、戸惑い、真っ赤になった。

「他人の顔させないわよ。」

「失敗して困るのは、お互い様だろう。」

「う・・・。」

「あ、あのさ・・・。ニワが話をしたいと言って、奴を部屋に入れて、裸になって抱きついて、押し倒したところに私達が駆け付けて・・・それで復帰を・・・え?いいアイデア・・・かと・・・た、ただちょっと言ってみただけで、本気じゃないって・・・。」

 4人にジト目で見られて動揺して墓穴を掘り続けるセキ。大きなため息をついて、ニワは、

「そんなことして、一時的に脅迫できても・・・それで、おとなしくしている玉かしらね・・・まあ、最後の手段として・・・でも、猫耳、あんたがやりなさいよ、言い出しっぺなんだから。・・・・わかったわよ、私も色ボケ作戦に加わってあげるわよ。胸もお尻を一ぱい押し付けてやるわよ。」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る