第3話 追放後は?
「リーダーはね、あんたの支援魔法で自分の力が評価されないって不満だったのよ。リーダーだけでなく、何人もいたのよ。あ、私はそうではなかったわ。それでね、あなたがいなくなってから、一ヶ月もしていなかったかしら、実力が認められて、出て行っちゃったのよ、有名なチームの…。」
ソウラだった。
「ああ、そこのチームの連中が俺にしきりに聞きに来てたのは、リーダーに目をつけていたからか。俺の支援魔法の効果は大したことはない、とくどいくらいに言っておいたけど。お眼鏡にかなったんだ・・・カンロもか?」
女達は無言になった。なんとなく、分かったように思うケンセキだった。
「剣士としての実力は十分あったし・・・彼女は・・・美人だったからな。」
ふくれっ面になった4人を見て、彼はしまったとも思わなかった。ふん、当たり前だろ、程度にしか感じなかった。
「リーダーがいなくなっても、誰かがリーダーになればいいだろう?それに、彼らが抜けた戦力の穴なら、俺に代わる優秀な連中が入ってたんだろ?それでも不足なら、補強すればいいだろう?」
「もう一人引き抜かれてね・・・。それから、リーダー達が引き抜かれたのを見てね・・・無茶な戦い方をして三人死んだのよ。ほら、口には出さなかったけど、対抗心が強かったから。」
ソウラが告げた名前の一人は、ケンセキがチームで二番目に美人だと思っていた女だった。"馬鹿な奴らだ。"三人の死に様が脳裏に浮かんだ。
「それから?たった6人いなくなっただけだろう?少なくとも、後十数人はいるチームで、お前達だけになるはずはないだろう?」
ケンセキの催促を促す、白状しろというオーラの圧で、4人は頷きあった。
「あなたの直後にね、入れたのよね、聖女、精霊使い、ベテランのサポーターのおっさん。」
ソウラ。
「しばらくしてね、魔獣使い、剣士・・・さらにその後に支援魔法の使える魔法騎士をね、入れたのよ。だけど、みんな出ていっちゃったのよ。」
と顔をしかめるセキ。"なんで出ていったんだ?何をしたんだ?それにだ、俺を追い出して俺と同じような奴をいれた~?どうなっているんだ?まあ、おれより優秀だったんだろう、どうせ。"ケンセキの表情から4人は彼の疑問というか、憤懣を察した。
「報酬に、自分の仕事に不満を言い出してね、それで、まず揉めたの。」
とコウが言い出しづらそうに口にした。
「あんたの以下の報酬で考えていたのよ。だって、あなたのやっていることを3人で分担してもらうからって・・・。あれだけの加護を与えてくれて、回復してくれる聖女やベテランのサポーターや数体の精霊を同時に扱う精霊使いの報酬の相場は私だって知っているわよ。不味いと思ったけど、会計を預かっていた賢者がさあ・・・。それから、自分達は後衛での仕事、護衛もつけてくれないとと言ってさ・・・それだって分かっていたわよ、でも・・・。彼女らね、護衛無しでも戦えたけど、護衛無しなら、その分割増しを要求してきたの。そしたら賢者ったら、彼女らに前線に立って戦わない奴らが、なんて言い出して・・・。」
「売り言葉に買い言葉になったのよ。それが、幾日か続いたのよ。」
ソウラをコウが引き継いだ。
「それで彼女らは出ていったというわけか。代わりにランクを落とした聖女やサポーターと魔獣使いを入れたわけか。ランクが落ちた分の不満をぶつけて・・・ぶつけられた彼らは出ていったというわけか?」
"よくわかったわね。"という顔の4人。"こいつらも、同調してたんだろうな。"
「それからどうなった?まだ、半分以上残っているだろう?」
「聖女と一緒にでていったのが、それぞれ2人いたの。それから、賢者もいなくなったのよね。」
セキがぼそっと言った。ソウラが引き継いで、ある日チームの共有の金とチームの女1人と彼は消えたという。
「交渉ごととか、一番面倒臭いことは私達にやらせるくせに、なんでこんなに面倒なことになるんだ、お前らは無能だと文句ばかりいっていたけど・・・まあ、それはそれで悩んでいたかも。」
「蓼食う虫も好き同士だな。」
ケンセキはその一緒に消えたという女の顔を思い出して、呟いた、決して美人ではないというほどの女ではなかったが。それには、同意だと女達は大きく頷いた。さらに、ソウラが説明を引き受けた。
「やっぱり支援魔法が必要だとか誰かが言い出して・・・たまたま誰かが見つけて・・・だれだったかな?・・・を入れたんだけど、あなた以上に微妙でね・・・。10人以上を一割以上パワーアップして、能力がないなんて文句を言われる筋合いはない、と怒っていたわ・・・そのとおりよね。それからランクをさらに落とした聖女を入れていたけど、彼女の力に不満でさ、それも文句の言いあいで、チームは険悪な状態になったのよ。」
こんどは、コウが引き継いだ。
「つかえない奴、あんたのことよ、私達がいったんじゃないわよ、とあまり変わらないってね。聖女は、傷をしっかり回復できるレベルがどれだけいると思うのよ、と怒鳴り返して・・・、それが毎日。支援魔法の彼は出て行って・・・女の子が一人ついて行ったわ。その後は、みんなの対立がひどくて、次々に出ていったの・・・。残ったのは私達と最後の聖女。」
ケンセキは、大きなため息をついた。
「まあ、リーダー達の気持ちもわかるな。身勝手だけど・・・腹を割って、率直に話してくれていれば・・・。まあ、俺が全く非のないとは言えないしな。」
と珍しく2杯目のホワイトエールを飲み干すと、しんみりとした調子でつぶやくと、三杯目のワインを飲み干していた彼女らは、つい気が緩んでしまった。
「あなたがリーダーの気持ちを察していれば・・・、目をつけていたチームに勧めるようなことを言ったから・・・だからリーダー達が行っちゃったし、2人も死んじゃったんじゃい・・・。」
「賢者に文句を言わずに、借金してもよかったのよ。」
「あなたも自分ばかり正しいという態度があったから・・・。」
「もっと頑張ってくれればよかったのよ。」
その言葉に、緩んでいた目元が急に厳しくなった。目が血走っていた。
「じゃあ、なにか?俺の能力のおかげだと吹聴していたらいいのか?なんで俺が借金しなければならないんだよ?大体、俺が立て替えてやって、返してもらえないことが多かったんだよ。何か言った時に、誰が自分が悪いといったことがあるんだよ、いつもおれが謝っていたんだろうが?その後、自分も悪かったと言った奴がいるか?聖女も言ったろう・・・それに俺は力不足だったかもしれないが頑張った結果なんだよ・・・。大体お前らはみんな・・・。」
彼は、場所もわきまえず声を大きくして、次々に不満を言い出した。
"こ、こいつ、こんなに闇を持って・・・。"と酔いがすっかり冷めてしまった。どうしたらいいか、頭が混乱してしまった。彼の言葉を延々と聞くはめになった。そして、すっかり吐き出したものの、怒りの表情がそのままになっていた。が、また、ため息をついて、
「まあ、一日考えさせてくれ。明日、ここに来てくれ。あ、一人、まだいたんだろう・・・聖女のために、酒と飯を用意してもらったから持って行けよ。」
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