第2話 チームからの追放

「は?何で追放なんだよ、俺が?俺が何をしたっていうんだよ?」

 ケンセキは、唖然として、よくある、突然の追放劇で当事者が言うことになっている定番的なセリフを口にした。

「それはな、お前が無能で足手まといで邪魔だからだよ。わからないのかよ?」

 チームのリーダーは、剣士である、その見事な金髪のたくましいイケメンの彼が、イライラするように怒鳴りつけた、ケンセキを。

 虹を渡る戦士、ひどく童話っぽいチーム名だが、は若いチームだった。5年前結成され、最年長者ですら25歳、最年少者は先月入った17歳の、まだ少年としかいえない面立ちの若者だった。ケンセキは、この時23歳、チームの中では古参メンバーだった。

 支援魔法で皆の戦力を上げ、回復・癒し魔法で負傷者の傷を治し、攻防ともに剣や魔法でみんなを支援して、野外での調理、荷物持ちから交渉、事務取引など雑用一般をこなし、頑張って、貢献してきたと思っていたし、当然、追放は不当だとして、そのことを声を大にして訴えた。が、

「お前。本当にそんなこと思っていたのか?独りよがりも、ここまで行けば勲章ものだな。お前らしいよ。誰も、お前がそんなことで貢献なんかしてると思っちゃいない。本当にわからないのか?」

リーダーの言葉に、

「大して力が増したわけでもないのにさ。」

「別に助けてもらわなくても大丈夫だったぜ。」

「かえって邪魔だったわ。」

「たいして早く治らなかったし、回復薬の方がましだったわ。」

「荷物持ちならもっといっぱい、速く持ってこいよな。」

と口々に文句を言いだした。

「私は助けられたと思うけど・・・。」

「食事やらつくってもらってありがたかったと思うよ。」

「傷も一応、その場で直ったしな。」

「危なくはなかったけど、助かったのは事実よ。」

という声もあったが、追放を反対するというものではなかった。


「ま、待ってくれよ。能力のかさ上げは、俺の体調もあるし、相性とかもあることだし・・・それはわかっていたことだろう?俺の能力が上がれば改善されるし、努力しているから待ってくれよ。回復だって、聖女様、賢者様には劣るだろうけど、応急手当としては良くやってるほうだろう?そっちも努力しているんだぜ。そりゃ大したことではないだろうけど、労力の節約くらいにはなっているだろう?本当に助けられるように剣とかもっと鍛錬するからさあ・・・。雑用も文句言わずやっていただろう?大目にみてくれよ。」

 その時までは、ケンセキは必死になってチームへの残留を皆に懇願していた。

 が、

「いい加減にしろ。」

と一人が声を荒げた。賢者、実力的にそこまで称されるところまで来ているかは微妙なところの、二番目の年長者であり、ケンセキより後に入会したくすんだ金髪の男だった。

「お前はいつもそうだ。自分ばかりが正しいとしか考えないで、人のいう事を聞こうともしないんだ。ここは、今まで自分が間違っていましたと、土下座して謝るところだろうが。それで許されるわけではないがな。そんなこともわからないのかよ。」

「はあ?そんなことできるかよ。」

 ケンセキは、この時になって切れかかった。顔がみるみる間に、真っ赤になっていった。その言葉お前に返してやる、と言い返すのをやっとのことで堪えた。それを言ったら完全にぶつかり合うしかない、ということが分かる程度には冷静さが残っていた。

「大体な、チームの金がないから立て替えておいてくれと頼んだら、借金は嫌いだとかとか言い出しやがってよ。み~んな、借金しているんだよ。それを自分だけ我がまま言いやがってよお。一言の謝罪もないのかよ。」

 彼は、チームの金の管理をしていた。チーム全体のために必要な金、仕事を果たした報酬の一部を天引きして蓄え、必要に応じて支出する役割、つまり会計担当をしていたのだ。彼が言い出したのは、チームに必要な装備だからと、他のメンバー達からの要請で、その購入を頼んだ時のことだった。そういう時の金も、本来そこから出されるのである。彼は、しかし、今はない、お前が借金してでも立て替えろ、後から払ってやるといいだしたのだ。それで、かなりの言いあいになり、リーダーの仲介でケンセキが謝罪して、チームの金からだすことになった。が、足りなくてかなりの額ケンセキが立て替え、そのままになっていた。ちなみに、仕事の報酬を受け取る事務とか、諸々の一番面倒なことはケンセキがやっていた。彼がやっているのは、金の入った袋への出し入れをするだけだった。

 かなりケンセキは、切れかかっていた。

「ああ、わかったよ。出て行ってやるさ。その前に、おれが貸した金を返してもらおうか?それから、数回分の報酬の俺への分配分はらってもらおうか?」

「なに言ってやがる。お前の報酬はな、チームとしての報酬だ。貢献のなかったお前に、今まで分配してやった分を返してもらおうか。でるところにでれば、誰もが認めるぞ。いや、出るところにでて取り返すからな。」

「やれるならやってみろ!」

 ケンセキは、自分をこの時も弁護しようとしないメンバー達を見て、完全に切れてしまった。そのまま、背を向けて出ていってしまった。


 それが2年前のことだった。


「その後、なにがあったんだ?本当の所を説明してくれ。」


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