第2話 存在しない人物
私は今、山道を歩いている。煕子姉様をおぶる光秀兄様の横を、兄様に手を握られながらゆっくりと歩いている。
私は歩いている間もずっと、この状況について考えていた。
とりあえず、私は転生したらしい。しかも、戦国時代に。未来とか異世界じゃなくて、過去に。
そして、前世から大好きだった武将、明智光秀の妹になってしまったらしい。
ここで問題なのが、私の名前。光秀に妹はいたらしいが、"桃音"などという名前ではなかったはず。
となると、ここは私の知る戦国時代ではない。私という「イレギュラー」が存在する戦国時代なのだ。
「桃音様、大丈夫ですか?」
私が眉間にシワを寄せているのに気がついた煕子姉様が、私に声をかけてくれる。
「大丈夫です、姉様。ちょっと不安になってしまっただけなので。」
ニコリと笑って返す。すると、煕子姉様は少し安心したような、それでいて申し訳無さそうな顔をした。
「姉様こそ大丈夫ですか?体調がすぐれなかったらおっしゃってくださいね。」
今度は私が、姉様を見つめる番だ。
「私も平気よ。」
姉様はそう言うと、兄様の肩に顔を埋めた。兄様はそれに気が付き、姉様を見て微笑む。
「…こんな状況なのにイチャイチャしないで。」
恥ずかしくて見ていられなかった私は、目をそらしてからボソッと言った。
すると、姉様と兄様は顔を見合わせてクスクスと笑い出した。
「桃音様も光秀様に甘えたいのですか?」
「安心しろ。越前についたらいくらでも甘えさせてやるからな。」
「そういうことではないんですが…。」
私がこの体に転生したのは昨日だけど、それ以前の記憶もこの体にはある。普段からこのようなやり取りをしていたことを、なんとなく思い出す。
私は、今後のことを考え始めた。
長良川の戦いで追われた明智軍は、なかなか士官先が見つからず、各地を転々としていたはず。
となると、これからはそういう生活になるわけだ。
「はぁ…、これから、大変になりそうです…。」
裏切り者の妹に転生しました 松原来愛 @buraiharisupekuto
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