裏切り者の妹に転生しました

松原来愛

第1話 転生

私は、暗い夜の道を歩いていた。

徹夜して仕事をしたあとだから、なんだかフラフラとするし、足取りも重い。

ウトウトしながら交差点を渡りだした。私は気が付かなかった。トラックが来ていたことに。


キキッーーー!


大きな音と強い衝撃がして、私は地面に倒れた。

痛い、痛い、痛い痛い!!

体から力が抜けていく。これはもう駄目なんだと、自分でもわかった。


「まだ、死にたくなんてないよ…!」


力なくつぶやいた私の声は、周りの人々の声にかき消された。そして、私は目を閉じた。


ーーーー✿ーーーーー✿ーーーーー✿ーーーー


「____さ_!!______く____い!!」


遠くから、男の人の怒鳴り声が聞こえる。

人々が騒ぐ声も聞こえてくる。

そして、パチパチと火が燃える音もする。

私は、ゆっくりと目を開けた。

__何故か、見知らぬイケメンに抱えられている。


「え?」


私が声を出すと、私を抱えるイケメンが驚いたように目を見開き、私の目に自分の手を当てて、目隠しをしてきた。


「起きてしまったのか。桃音にはこのような戦場を見せられないな…。そのままじっとしてて。」


イケメンはそう言うと、走ってきた誰かと話をしだした。私は状況が理解できず、頭の中には?が溢れまくっていた。


「光秀様、行きましょう!」


「だがしかし…!」


「桃音様も守らねばならないのです。覚悟を決めないといけません!!」


聞こえてきた女性の声に、私は思わずビクリと体を動かした。そりゃあ推しの名前を聞けば誰でもそうなるだろう。

目の前にある手をブンと放り投げて、目隠しを外した。すると、私の顔を美女が覗き込んでいた。


「桃音様!また力が強くなられたのですね!」


美女は目を輝かせて言った。どうやら、桃音、とは私のことらしい。


「煕子、お前も妊娠中…。桃音もいる。やはり、越前まで行くのはやめたほうが…。」


はらいのけられた手を一瞬見つめたイケメンは、私の顔を覗き込む美女にそんなことを言った。


「いいえ、ここにいては私たちも殺されてしまうかもしれません。この子のためにも、桃音様のためにも、ここを離れましょう、光秀様!!」


この美女__煕子姉様の話で、大体状況はつかめた。私、戦国時代に転生したらしいです。

しかも、前世からの推し、明智光秀の妹として。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る