第4幕 リムネッタ

「そ、そんな……」

 北の前線に辿り着いたリムネッタは愕然とした。シュネー国の旗を掲げた兵士達が、町を壊し、人を殺している。騎士団の人達が必死に抗戦しているものの、形勢は明らかに劣勢だった。

「リムネッタ!」

 呼ばれて振り返ると、そこにはニコがいた。

「ニコ! 大丈夫!?」

 リムネッタはニコに近づく。ニコは怪我をしたのか、左腕を右腕で押さえている。

「ちょっと怪我しちゃってね…でも軽い切り傷だから大丈夫」

 ニコは笑みを浮かべると言葉を続ける。

「それより大変だよ。敵の数が多すぎて…騎士団のみんなも必死に戦ってるけど、このままじゃ…」

 全滅という言葉をぐっと飲み込むニコ。

「そんな……」

 リムネッタの鼓動が早まる。

……みんな、死んじゃう……

 頭の中が真っ白になる。

……そんなの、そんなのダメ!……

「……」

 リムネッタの瞳に闘志が宿る。

「私、行くよ」

「え?」

 ニコが聞き返した時には、リムネッタは既に敵の輪の中へと走り出していた。


 リムネッタは敵に囲まれながらも、一人一人確実に敵を倒していく。殺すことにためらいはなかった。

……四人、五人、六人……

 頭の中で人数がカウントされていく。敵を倒すことと数を数えることだけを考える。

……七人、八人、九人……

 リムネッタに斬られた人が、次々とその場に倒れていく。

……十三、十四、十五……

 機敏な動きに激しい斬撃で敵を斬り裂いていくリムネッタ。数を数えること以外の思考は停止していた。

……十七……

 十七人目にリムネッタが斬りつけた兵士は、赤く長い髪をした同い年くらいの少女だった。

「あ……」

 血を流し、ゆらりと体を揺らす少女。その髪を見て、リムネッタの脳裏にルシアの姿が浮かぶ。

……ルシア……

 リムネッタの動きが一瞬止まる。

「あぁぁぁぁぁ!」

 赤髪の少女が最後の力を振り絞って大声を張り上げるのと、ぐさりとリムネッタの脇腹に斬撃が入ったのは、ほぼ同時だった。

……あれ?……

 リムネッタはバランスを崩し、足元から崩れ落ちていく。

「リムネッタ将軍!」

 遠くから、誰かに呼ばれた気がした。リムネッタは、赤髪の少女の上に重なるようにして倒れこんだ。

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