第2幕 招集

 それから数日後、ルシアとリムネッタ、それにシャルロッテとニコは、ヘンリエッタの招集を受けて会議室に集まっていた。広い会議室の中は防音になっており、静けさが漂っている。

「パレードを明日に控えた忙しい今、突然呼び出したりしてごめんなさい」

「いえ、それほどに重要な件…なんですよね?」

 ルシアが尋ねると、ヘンリエッタは小さく頷く。

「前置きは省いて、要件だけ伝えるわね」

 ヘンリエッタの表情は険しかった。

「シュネー国が、近々戦争を仕掛けてくるという情報が入ったわ」

「えっ…」

 声を出したのはニコだった。驚きの表情の後、表情が少し曇る。ニコにとっては、自分の国を滅ぼした相手国だった。

「具体的には、いつ頃ですか?」

 ルシアが尋ねる。

「情報によると…数日以内には、おそらく。既にシュネー国の兵士団が進軍の準備を終えているという情報も入ってるわ」

「数日…」

 リムネッタも緊張した面持ちでつぶやく。

「敵の勢力はいかほどでしょう?」

 尋ねたのはシャルロッテ。

「八百程度という話だけれど、確証は無いわね」

 ブルーメ国の戦力は、第一騎士団と第二騎士団、それぞれ二百人程度。数の上では圧倒的に不利であった。

「明日のパレードは、中止しないのでしょうか?」

 再びシャルロッテが尋ねる。

「えぇ、予定通り行うわ。明日のパレードには各国の使節も来ることになっているの。いくらシュネー国と言えども、中立国まで敵に回すようなことをしないだろうという判断よ」

 シャルロッテは納得したようにこくりと頷く。

「とは言っても、楽観は出来ないわ…決して警戒は怠らないこと、いい? パレードが終わり次第、本格的に戦争の準備を進めていくから、そのつもりでお願いね。他に何か聞きたいことはあるかしら?」

 ヘンリエッタは四人を見渡すと、小さく頷く。

「それでは解散」

 ヘンリエッタの声が、広い会議室に重く響いた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る