■6■ 約束
夕暮れの丘に冷たい風が吹く。あの事件の翌日、ルシアとリムネッタは、再びこの丘に来ていた。しばらく言葉も無く、二人で岩に座って雲を眺める。
人の死に触れるのは、二人ともこれが初めてでは無かった。二人にとって死は、とても恐ろしい物であったけれど、厳然として目の前にある、逃れようの無い現実だった。
「どうして、ひと同士が殺し合うんだろうね……」
口を開いたのはルシアだった。リムネッタは何も言わず、ルシアの言葉に耳を傾ける。
「あの人には、奥さんも、子どもだっていたのに……」
ルシアの表情に陰りが見える。
「ほんの少しでもいいから、平穏に暮らす人たちの幸せを、この手で守りたいよ……」
ルシアは拳をぎゅっと握り締めて真剣な表情になると、遠い地平線に視線を向けた。
「私、絶対、騎士になるよ……誰よりも強い騎士になって、悲しむ人達を、一人でも多く救えるようになりたい」
「……うん」
リムネッタはルシアの言葉に小さく頷いた。ルシアはリムネッタに向き直って語りかける。
「ねぇ、リムネッタ。もう一度、約束しよう? 二人で騎士になるって」
ルシアの瞳に、リムネッタの姿が映る。固い決意のこもった瞳だった。
「うん……約束」
リムネッタも決意を固めた。騎士になるには、これからたくさん頑張らないといけない。ルシアと一緒に騎士になるという漠然とした夢や憧れが、達成すべき明確な目標になった瞬間だった。
「二人で騎士になる、その日まで……私、絶対にめげないから。絶対に、諦めないから……」
ルシアが宣誓する。ルシアの力強い決意の言葉は、リムネッタの心に深く深く刻み込まれていった。
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