何気なく動画投稿を始めた主人公が、ごく些細な切っ掛けから「人生の全てをそれにつぎ込む」までに熱中していく。現代人にさもありなんと思わせるリアルさがこの作品の根底に感じられました。
もっと! もっと! もっとだ! もっと私を褒め称えろ!
無限に膨れ上がっていく承認欲求と、いかなる時代にも付き物な栄枯盛衰。
その先に待ち構えている結末は決して幸福なものではなさそうですが……。
はたして極限まで追い詰められた人間を最後に救ってくれる物はなんなのか?
そのオチすらもリアルさが徹底している点が実に素晴らしい。
社会の最前線でボロボロになるまで戦って心身を壊してしまった人にこそ読んでもらいたい名作。人間賛歌は勇気の賛歌だが、令和の時代に生きていくなら現代に相応しい賛歌が求められているものです。私たちは決してスーパーヒーローではないのだから。
このレビューは「短編だけど読み応えたっぷり」という企画で書かれたもの。まさに短編ながら映画のような見応えがありました。お見事でした!