怠け者で天才な関係
次の日の放課後
俺は、演劇部に来ていた。もちろん姫宮に傘を返すためだ。扉を開けて中に入り、周りを見渡して姫宮を探していると三人掛けのソファーの上に寝っ転がって、だらけているレアキャラを見つけた。あっちも俺に気づいたのか吞気そうに手を降っている。
「あれ?睦月君じゃないですか。久しぶりですね」
というやけに間延びた声を出す。確かに久しぶりは久しぶりだな。この聞くもの全てを脱力感させるような声。俺は、そっちの方に近づく。その間に寝っ転がっているレアキャラはゆっくりと起き上がったけどひじ掛けに両腕を載せてそこに頭を乗っけている。
「久しぶりだな、千歳。さぼっていていいのか?」
ちなみにだけど、千歳というのは苗字で別に名前で呼ぶ仲というわけではない。千歳風香がこのだらけ魔の名前だ。演劇で使う大道具、小道具の制作を担当する。多岐にわたるその技術で一級品を作る天才で演劇部を支える一人…では一応あるんだけど見ての通り怠け者だ。立っていれば肩より少し長いとわかる髪は、さっきまで寝っ転がっていたせいか盛大に乱れている。頭のてっぺんから出ているアホ毛は本人の精神状態を表しているようにぐったりとしていた。
「見てわかんないんですか?睦月君。私はこのソファーの耐久テストをしているんです。サボってなんかいませんよー」
とのたまう。さっきまではソファーで寝っ転がっているくせに何言ってるんだよと口に出そうになるが言ったところで無駄なのは、それなりの付き合いだから分かる。
「副部長に見つかったら怒られるぞ?」
俺は、今はここにいない副部長の名前を出す。千歳は基本的に怠け症がぬけないからその度に副部長と鬼ごっこが始まる。
「そうなったらに逃げますよ~。あの鬼に捕まったら何されるかわかりませんからね」
先輩なのにそんなことを言ってもいいのかと思ったがこれが平常運転。そう言えば、このソファーは、Bチームで使うやつか。
「そのソファーは買ってきたわけないよな?」
なにせ見た目は普通に売っているのと変わりない。ひじ掛けは木製でニスが塗られて綺麗に光を反射している。布地も黒で全体的に高級感が漂う。それなりのいい店で五万くらいで売っていそうだった。
「そんなことをしたら、部費がなくなっちゃいうますよ~。それなら私がもらいますよ」
「横領するなよ」
「そんなことするわけないじゃないですか」
と言いながらできない口笛をしようとする。疑いの目をじっと向けると千歳は徐々に目をそらす。言わずともギルティだ。
「いや、千歳の相手をしている場合じゃなかった」
本来の目的を忘れいていた。千歳と話しているとなかなか本題に入れない。
「相手してくださいよ~。最近、私とゆっくりしてくれる人がいないんですよ」
「いや、仕事しろよ」
「これは仕事じゃなくて部活ですよ~。それにやる気がない時に作業していいものを作れる訳ないじゃないですか」
まあ、ごもっとも。
「それに納期にも間に合ってますし」
「ダウト。お前どうしよもなくなったら俺に手伝わすのやめろよ。しかもその時に限って俺も修羅場なんだぞ」
俺が手伝っていなかったら今頃納期破りの常習犯だぞ。しかも演劇部じゃないのにいろなスキルが身についたし。
「え~?いいじゃないですか。クリエイター同士、一緒に道…じゃなくて助け合いましょうよ」
こいつ絶対道ずれって言いそうだったな。
「なんで俺なんだよ」
「一番罪悪感がわかない相手…いや、親しい仲だからですよ」
ものはいいよう。一番罪悪感がないと言われてから親しい仲と言われても心に響かないものはない。
「日本語って難しいな」
「そうですね~」
と日本語の難しさにを二人で再認識して和んでいたところでつい、一度忘れた本来の目的を思い出した。
「それは、さておき、姫宮どこか知らないか?」
「姫宮さんですか?私は見てませんけど?なんかようなんですか」
「ああ、昨日傘を借りたら返しに来たんだよ」
「なるほど。そう言えば昨日はいきなり雨が降りましたよねえ。私は傘持ってなかったんで作りましたよ。睦月君もこっちに来れば作ってたのに」
サラッと傘を作るなんて言っているがなにも言わない。こいつはないなら作ればいいとか言って平然といろんなものを作る。傘ぐらいでは驚かない。
「そうかその手があったか」
「そうですよ。傘の一本や二本なんて作るのは手間じゃないですからね」
いや、傘を作ることを料理感覚でいわれてもな。
「そう言えば鬼も持っていなかったんで特別製を用意してあげましたよ」
明らかに、悪い意味でのいい笑顔を浮かべた千歳はノリノリだった。
「あけたら閉じない傘を作ったんですよ。家の中に入ろうとして、傘を閉じられないで焦っている鬼の姿を思い浮かべると笑いが止まりませんよ~」
ビデオでも、撮っておきたかったですねとお腹を抱えて笑っている。この怖いもの知らずに今のうちに合掌しておこう。鬼ごっこがんばれ。しかし
「姫宮どこに行ったかわかるか」
俺が聞くと笑いを少しずつ収めていき落ち着くと
「ん~。わかりませんね~。ここに居ればいずれ来ると思いますよ。だからそれまで私とゴロゴロしてましょうよ。休める時に休むのが一番ですよ」
「お前はいつも休んでんだろ」
と俺は、千歳にツッコミを入れると三人掛けのソファーに座る。結局、姫宮が来る一時間後まで俺は、千歳とゴロゴロしながら話していた。
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