拾ったと落としたの関係

帰宅後。


姫宮に連絡を取った。その時、姫宮は丁度、家に帰る途中だったみたいだ。姫宮は演劇部が終わったその時、カバンを見たら筆箱がなかったことに気づいたらしい。それですぐに文芸部の部室に行も、俺は、帰っていたといわけらしい。姫宮にとってはある意味ナイスタイミングだったみたいだな。明日は一時間目が体育なのでその帰りに教室によりますということだった。筆箱のの件は一件落着。俺がど忘れして、置いてかないように筆箱はバックの中に入れたままにしておいた。


部屋着に着替え、風呂を沸かし、その間に夕飯を食べる。今日は、キャベツたっぷりのコロッケパンとクリームとあんこがぎっしり入ったデザート枠のクリームあんパン。クリームあんパンは作るのがめんどくさいが、冷やして食べると美味しいので余裕がある時に作っているのだ。


俺は冷蔵庫からコロッケパンを取り出して、オーブンにぶち込み、カフェオレをコップに注いで、暖め終わるのを待つ。十秒たったら上下を逆にしてまた暖め直す。これをしないと片方あったかで片方ぬるめなんてパターンが起こりかねない。それの予防だ。そうしてまた十秒後にオーブンから取り出せばほかほかのコロッケパンが完成だ。さっとテーブルに持って行き、次にクリームあんパンとカフェオレを持ってくる。テーブルの上にあるリモコンを取りテレビを付けるがまだ夕方だからか、ニュース番組しかやっていない。まあ、別にいいか。BGM替わりだ。


パンをモシャモシャ食べながら、俺は今後の予定を考えてた。まだ4月。されど4月。まだ間に合う、まだ間に合うと考えてある内に締め切りはひっそりと忍び寄り俺の首を刈ってくる。だからやることを整理して、おかないとそのしわ寄せで、数日引きこもりのパソコンとにらめっこなんてザラにある。まあ、予定道理にやっていても思いつかなければ、結局パソコンとにらめっこだが。


一番近い予定としては、文化祭で使う劇の脚本に、部誌だ。その後に大会があって定期公演があってとなかなか忙しい。まあ、増えた事だし俺の負担も軽くなるだろうけど、一つ作るだけでも充分大変なんだよなと思いながらコロッケパンを食べ終わった俺は、次にクリームあんパンに手を出す。ひんやり、しっとりとしたパンにクリームの甘さとあんこの甘さがよくあっている。疲れた脳に糖分が補給されていく。食べ終わったら風呂に入って、テレビを見つつパソコンとにらめっこだ。常に締め切りを意識しとかないと、気が抜けて別の方向に走りかねない。進めてもらったゲームやアニメなんか見ていたらそれだけで一日が終わってしまう。そんな時間泥棒はいらん。次の話、次の話と思っているうちに、時間が経っているなんて想像するだけでも恐ろしい。むしろなんでその集中力をほかに生かせないのか・・・・。まあ、それはほかの人も同じか。よくあるテスト前で勉強しないといけないのに、ついつい別のことをしちゃう現象。あれなんか名前がついてるんだよね。何だったか。


そんなどうでもいいことを考えながら、今日の夜は、過ぎていった。





●●●


朝、特に特別なことはなく、起きたらご飯をを食べていつもの時間に出る。まあ、いつもと違うのは、姫宮の筆箱を忘れないように何度か確認したくらい。自転車に乗って学校への道を颯爽と走る。所々にうちの学校の生徒が、急いで走っているのが見える。自転車を使って、五分前につくのに今吞気に歩いてたら遅刻だしな。頑張れ徒歩の諸君。俺は、これ見よがしに、走っている生徒の横を颯爽と抜いて学校についた。クラスに入ってみれば、ほぼ全員が揃っていた。当たり前か。何せホームルームの五分前だ。俺もさっさと席に着くと二つの屍があった。いうまでもなく睡魔にやられて熟睡している日向と大内だった。起きている鶴見はおはようと笑顔で手を振ってくる。何度も言っているかわからんが鶴見は男である。これはこのクラス全員が分かっていることだ。しかしたまに鶴見が女の子にしか見えない時があり、それが今だった。鶴見は演劇部があって作業でもしていた時に前髪が邪魔だったのか、ピンクのヘアピンをつけていた。


もしかしたら、睡眠不足じゃなくて、二人はこの魔力に屈して倒れたのか?・・・・ほっとこう。うん、それがいい。


「おはよう鶴見」


俺は、ヘアピンを取り敢えず無視して、鶴見に挨拶を返す。


「ねえ、睦月君。さっきからこの二人を起こそうとしてるんだけど起きないんだ」


もうすぐホームルーム始まるのにとつぶやきながら、起きて大内君、日向君と肩を揺さぶっている。・・が起きない。なんとなく流れが想像できた。二人して机に突っ伏して寝ていたところに、鶴見が朝練を終えて教室に来る。んでなんだかんだと時間が過ぎて起こそうとした。それで寝ていた二人は、女に見える鶴見を見て、自己暗示モードに入ったのだろう。確かに、今の鶴見が本気で女の振りをすれば何人かは落ちる。


「ああ・・。今、二人は、自己暗示なんだ。そっとしておこう」

「なんで自己暗示?」


だから鶴見さん。無意識かもしれませんが、可愛らしく首をかしげないでください、お願いします。




一時間目が終了し、休み時間。この二時間目との休み時間の間に姫宮が取りに来るはずだ。そう思って廊下の方を見ていると見覚えのあるサイドテールの女の子が見えた。カバンから姫宮の筆箱を取り出して席を立つ。日向と大内は今度こそ寝ているし、鶴見は丁度トイレに行って・・・・鶴見ヘアピン外したか?惨事が起こるぞ。話がそれた。一先ず返そう。俺は、さっと教室の後ろを抜けて廊下に出ると丁度姫宮がいた。後はなんかもう一人いた。体育の後だったからもちろん体操服である。ちなみにだが体操服のデザインは上は白で左胸に校章があり校章の色は学年色。一年は、濃い青、二年が黒、三年が赤になっている。下の短パンの色も学年色だ。


「おはようございます睦月先輩!葵ちゃんが筆箱を取りに行くから授業終わったら二年の教室に行くって言うんで付いてきちゃいました!」


何というか。姫宮と対照的だった。ずいっと一歩前に出て元気よく挨拶される。余りにもいきなりだったからこっちが引いてしまった。というよりもこの子は演劇部か?俺の名前知っているってことは。黒髪を水色のシュシュで結んで居るその子は姫宮とほぼ身長が同じで目が大きくいかにも、元気な女の子のこという感じだった。


「あ、ああ。うんおはよう」


さっきも言った通りコミュニケーション能力がない俺にとってここで若干引いてしまうのは仕方ないと思う。むしろ挨拶を返せただけ十分だ。


「椿、何度もその一気にまくしたてるのやめなって言っているのにどうして治らないの?」


姫宮がやれやれとでもいいたげな顔をしている。


「それを言うなら葵ちゃんだって、緊張すると表情が硬くうむひゃみゃう」

「余計なことをいうのはこの口?」


ねえねえと言いながら姫宮は椿と呼ばれた少女の頬をむにょむにょしている。ああ・・うん。置いてきぼり感がすごいけど仲がいいのはいいことじゃないかな。それと文芸部であった時のは緊張していたのね。


「あー。取り敢えず姫宮」


俺がそう言うと、姫宮がむにょむにょしながらこっちを向いて向いた。俺は、筆箱を姫宮の前に出す。姫宮は、むにょむにょをやめて筆箱に手を伸ばして取ると大事そうに抱えた。その様子から何か大事な物が入っているのかと思ったが気にしないで置いた。なぜならそれよりも深刻な問題があったからだ。俺ではなく二人にだが。


「えっと二人共、そろそろクラスに戻らないと着替え間に合わないんじゃない?」


俺は、二人にそう言った。二人は、クラスの中にある時計を見ると事の重大さに気づいたらしい。


「あ!早く戻って着替えないと!」

「だからついてこなくってもいいって言ったのに」

「いいのわたしが着たかったんだからほら、早く戻らないと!」


そう言って姫宮の手を取って歩き始めるが


「椿ちょっと待って」

「え?あ、うん」


なんだ?


俺は、早くしないと遅れるぞと言おうとしたが


「筆箱、拾ってくれてありがとうございました」


そう言って軽く頭を下げると椿行こうと今度は逆に手を引っ張って行く。その時の顔は初めて会った時よりほんの少し表情にやわらかさがあったかもしれない。










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